患者転倒、新人看護師に現場教育と注意喚起を
(70歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
当該患者はびまん性リンパ腫の治療を目的に入院中で、脳梗塞により右片麻痺であった。勤務して数日の新人看護師が1人で患者の排泄を介助した後、ベッドへ誘導し座らせた。その際に患者は座位の体勢を維持できず、ベッドの右側に転倒して右大腿骨頚部内側骨折となった。その後腰椎麻酔下で人工骨頭置換術施行。術後はリハビリを開始して、内科に転科した。
患者側は、当初は強く医療機関側を問責する様子はなかったが、時間の経過とともに、事故前より介護に関して家族の労力が増すことを認識し始め、クレームに至った。
新人看護師は検温のみの目的で訪床したが、患者がポータブルトイレを使用したいとの希望から、トイレ介助を1人で行った。新人看護師は、患者が右片麻痺である等の身体的状況を十分に把握していなかった。患者をベッドに座らせる際に、臀部全体がベッドにかかっていなかったことが院内調査で判明しており、医療機関側は新人看護師の注意不足であったとして過誤を認め謝罪した。
なお、仮にベテランの看護師であれば、患者の状態を考慮して、ベッドに座らせる場合もより慎重に行い、今回のような事故は発生しなかったと考えた。今後、新人看護師に対しては、予定外の看護をする場合は、先輩看護師を呼ぶ等、注意喚起を徹底するとのことだった。また、新人看護師は患者の骨折が確認されるまで患者が転倒したことを報告しなかったが、以後は看護上に起こったことは詳細に報告をするように注意した。
紛争発生から解決まで約1カ月間要した。
〈問題点〉
以下の点から若干の過誤が認められた。
①患者が右片麻痺である等、身体的要因も今回の事故の要因である②新人看護師はトイレ介助を1人ですべきではなかった③医療機関の体制として、新人への指導も不充分であった。
新人、ベテランにかかわらず、患者が右片麻痺である等、看護対象の患者の状態を十分に確認し共有することが大切である。
〈結果〉
医療機関側が一部、賠償責任を認めて示談した。