認知症ケア加算と届出不要の施設基準
届出医療機関が比較的多いこともあるが、認知症ケア加算も文書指摘が多い入院基本料等加算である。加算「1」では、認知症ケアチームが必要とされる人員から構成され設置されている必要があるが、このうち5年以上の経験を有し適切な研修を修了した専任の常勤看護師については、週16時間以上このチームの業務に従事していることが求められている。この時間を客観的に示すことのできる書類を整備しておきたい。他にもカンファレンス記録、院内ラウンド記録、研修記録と受講状況も整備しておく。
加算「2」では、認知症患者が入院しない病棟を除き全病棟に適切な研修を受けた看護師を複数配置することが必要とされている。適切に配置されていないとして過去には自主返還につながったケースもあるので注意が必要だ。また、研修や事例検討会等が年1回は必要とされているので記録を残しておく。
加算1・2共通で求められているのが認知症ケアマニュアルの整備だ。院内で活用されていることが必要な他、身体拘束の実施基準や鎮静を目的とした薬物の適正使用の内容が盛り込まれている必要がある。また施設基準ではなく算定要件ではあるが、身体拘束を実施した場合、解除に向けた検討を1日1度は行うとされていることから、カルテ上きちんと記録が残るようにしておきたい。
さて、施設基準を満たしていれば届出は不要で算定可能とされているものがある。入院基本料等加算では、救急医療管理加算や臨床研修病院入院診療加算等がそれで、特掲診療料においても通則5・6の手術等がある。点数表には「別に厚生労働大臣が定める施設基準を『満たす』」と規定されている点数である。これらは施設基準が存在するため、適時調査時に施設基準に適合しているかどうか確認される対象になり得る。当該点数の算定がある場合は、届出不要であるものの、施設基準に沿った運用ができているかどうか、特に重点的に調査を行う施設基準とされている場合(シリーズ⑨参照)は注意する。
届出している施設基準の一覧を院内掲示する必要があるが、届出不要な施設基準については一覧に含まないことが正しいとシリーズ⑪で紹介した。ところが届出不要の通則5・6の手術では、その施設基準に前年の手術件数を院内掲示すると規定されているため、この掲示は必要となるのだ。