令和の年にふさわしい保険医協会の活動を
令和元年となった今年、京都府保険医協会は創立70周年を迎える。この年に理事長に就任した者として新しい年に相応しい協会の運営・運動を模索し、協会の発展と会員の権利と利益の擁護に微力を尽くしたい所存である。
改元で新しい日本の新しい機運の招来を期待する声が聞こえる。歴史的に見れば天皇の生前退位は頻回に行われ、また改元も一代に何回も行われていたところである。それぞれ瑞祥を記念(または祈念)し、人心の刷新を狙ってのことであったろう。しかし、裏付けとなる具体的政治・政策転換を伴っていなければ、単なるムードで終わるであろう。
令和の出典となった“国書”「万葉集」が注目を集めている。しかしこの「題詞」は漢籍からの引用である。また「万葉集」は古代朝鮮語で別の意味の歌として読めると言われている。いずれも、当時アジア各国間の活発な人文交流のあった証左であろう。これを踏まえ令和とは国の枠組みを超えた北東アジア大文化圏の貴重な文化遺産ととらえ、このアジア地域圏での平和で安定的な繁栄を期した言葉と受け止めたい。
令和改元下の我々日本の医療・社会保障関連政策を見てみると、すでに政府の改革の方向や目標は設定されており方針転換の余地はないほどに(微調整はあり得るが)決まっているように見える。果たしてそれは、国民・患者・医療者に希望を与える内容になっているか?
具体的に見ていくと期待に反し厳しいモノばかりである。医療機関にとっては来年の診療報酬改定をテコに医療費抑制策が模索されており、財政制度等審議会・財政制度分科会では診療報酬の合理化・適正化、地域別診療報酬、国保法定外繰り入れの急速解消などが強調された。医師法・医療法が改定され医師偏在是正の名目で病院勤務医の勤務地規制のみならず、診療所の開業規制も示された。患者サイドでは後期高齢者の保険料について、低所得者に対する軽減の特例が10月に撤廃されるなど、患者負担増が予定されている。すでに昨年8月からの介護保険料引き上げ、今年4月より多くの地域で引き上げられた医療・介護保険料や昨年8月の高額療養費基準限度額切り上げ等の影響も出ている。
これら一連の動きの根底には国家財政の問題が存在することは確かであり、京都協会は垣田前理事長時代からこの財源問題についても検討と議論を重ねてきた。「必要な医療給付水準は守りつつ新福祉国家構想の実現を目指す、そのための方策は何か?」。このテーマを通奏低音として引き続き資料の収集・分析と議論を深めて行きたい。
もちろん活動の基本は日々の会員の声に根差した、今まで各部会が担ってきたさまざまな分野での実績を継承・発展させることである。令和の年が少しでも医療者・国民・患者・そして協会にとって明るい元号の日々として後代に残していけるように皆さんに協力を仰ぎながら何とか歩んでいく所存である。