協会は医師偏在問題についての要請を厚生労働省医政局に5月23日、行った。会員署名「医師偏在解決には〈開業規制〉ではなく地域再生と公的な医療提供体制再建が必要」150筆分を提出するとともに要請書「医師偏在指標に基づく医師偏在対策は中止すべき」を手渡した。対応したのは、坪井博文・地域医療計画課在宅医療推進室室長補佐、松浦祐史・医事課課長補佐、佐藤拓也・地域医療計画課主査の3氏。要請は福山哲郎参院議員の紹介で行われた。要請資料は、京都の国会議員にも届け、面談できた穀田恵二衆院議員・井上哲士参院議員および福山議員と木村弥生衆院議員の秘書に要請の趣旨を説明した。
厚労省への要請では、京都府でこれまで医師少数区域とされていた「丹後」が少数区域でなくなり、「南丹」「山城南」が新たに多数区域と府医療対策協議会(5月13日)で国データを基に報告されたことが、あまりにも地域の医療者の実感とかけ離れていること。患者流出入を反映することで、医療機関が少ないために患者が流出していることを前提にすると、その状態が固定され、町全体がさらに疲弊していく懸念を説明。このような医師偏在指標に基づく医師偏在対策は中止すべきだと要望した。
これに対し医政局は「指摘はよくわかる」としたうえで、すべての地域で実感と合う指標となるのは無理であり、それが分かっていながら指標が求められたのは、見える化をしないと、どこに重点対策すべきかが進まなかったからだと説明。流出入に関しても都道府県の考え方があるので調整いただいている。指標はあくまで指標で、これまでの取組みができなくなるということではなく、ツールとして活用し継続すべきことはしてもらいつつ協力していただきたいとした。
病床数、医師数、働き方が三位一体である意味
この他、医師需給「第4次中間とりまとめ」にある「十分な効果が生じていない場合には、無床診療所の開設に対する新たな制度上の仕組みについて、法制的・施策的な課題の整理を進めながら、検討を加えていくべき」との記載は、今後制限が法制上可能かどうかを含めて検討するということかと質問。厚労省は、開業規制の話はしていないが、この取組みで何も変わらず、偏在が進行するようでは、それも含めて検討が必要になる。そうならないように今の取組みを進めていただきたいと回答した。
外来医師多数区域で地域に必要とされる医療機能を担うよう求めるのは親子間の承継でも同様なのかについて、基本的には届出に記載してもらうが、協議の場における確認の取扱いは検討中であり、今後、疑義解釈の中で示していきたいとした。
さらに、「医師の働き方改革」で病院の二交代制が増えていくことにより、都市部で医師が増えることになる。偏在が進んでしまうが、政策的な整合性はとれているのかとの問いには、医師偏在対策と医師の働き方改革、地域医療構想は一体的に議論を進めなければならない。各病院で二交代制を実現しようにも医師数には限りがある。現状で医療機関が多いのは事実で、地域医療構想で必要な病床数、機能を推計して、それに合わせて働き方改革を実現すると需給の推計になってくるとした。
また、医師多数区域のみの都道府県での地域枠のあり方や医師偏在指標の計算式「標準的な受療率」への疑義などで意見交換。最後に協会から、開業医にとって自由開業制は重要なポイントで、国の介入を非常にセンシティブに受け止めている。本当の意味で医師偏在を解消していく方法を考えて提案していきたいと述べた。