京都小児科医会と協会は小児科診療内容向上会を3月30日に開催。冒頭、協会が異例の大型連休中の診療への対応や、秋の消費税増税への対応(初診、再診料の改定)について、さらに京都小児科医会が6月8・9日に京都テルサで主催される「日本小児科医会総会フォーラム」の案内などを周知した。続いて小児科医会理事の安野哲也医師より保険診療に関わる解説として、慢性疾患対象の処方履歴がある患者の初診料や、小児抗菌薬適正使用支援加算の算定等、留意事項の説明があった。その後に行われた2講演「緊急時の子どものこころの反応とその支援」「舌下免疫療法の病診連携~病院だからできること、開業医だからできること」について報告する。
小児科診療内容向上会レポート
子どもの被害に直面想定し準備を
演者の福地成(ルビ:なる)医師は、小児科研修を経て精神科専門医を取得された、心身両面から治療できる児童精神科医であり、2012年以降、「みやぎ心のケアセンター」に勤務。現在は副センター長として、東日本大震災後の子ども達の心の診療に加えて、地域の精神保健システムの構築や支援者へのスーパーバイズ等にも尽力してこられた若きリーダーである。講演では事例を交えながら、被災後の子どもの症状を理解する上で、時間軸による変化と、発達年齢を考慮した対応が重要であると述べられた。
前者については、急性期に見られる身体症状や退行、高揚、トラウマを再現するごっこ遊び等の「急性ストレス障害」は異常事態に対する“正常な反応”であり、むしろそう言った症状を呈さない子どもの方が危ういことを指摘された。
突然の災害で大人も混乱し日々の生活に追われる中、不安を吐き出せない子どもは想像以上に多いのかもしれない。急性期に表出、受容されずに恐怖感・不安感を持ち越すと、中長期には発達年齢により、注目行動、不安症状、頑張りすぎからの抑うつ等、多様な反応が出現しうる。より早期に適切なケアが望まれるのは当然ながら、被害が甚大な災害ほど「個別の心のケア」などマンパワー頼みの対策では間に合わない。では私たちにできることは何か? その問いに二つのヒントをいただいた。
一つは子ども達が心から安心して遊びや冒険を楽しみ回復できる「場所作り」、もう一つはトラウマを抱えた子への心理的応急処置の素養を身につけた大人を増やす「地域作り」であり、ユニセフのChild Friendly
Spaces(CFS)、およびWHO版心理的応急処置(PFA)を子どもに特化したNGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの研修も紹介された。座長の有井医師も指摘されたように、自然災害にかかわらず事故、いじめや虐待など、子どもの被害に直面した際に適切に対応できる「準備性」を私たち小児科医こそ意識すべきと身が引き締まった。
舌下免疫療法の魅力とコツを解説
演者は神戸市立医療センター中央市民病院小児科医長の岡藤郁夫医師で、学会評議員も務められる小児アレルギー界を牽引される医師であり、舌下免疫療法(SLIT)に積極的に取り組んでこられた臨床経験に基づきその魅力とコツを語られた。
アレルゲン免疫療法が奏効すれば、同アレルゲンによる眼・鼻・喘息など下気道、さらにはアトピーなど皮膚症状など全身的改善が期待されるだけでなく、新規アレルゲンに対する感作拡大も抑制されるなど、小児で実施する意義も大きい。従来の皮下免疫療法(SCIT)と比較してアナフィラキシーの併発も稀で、根気は必要だが安全に実施可能である。
講演では、いかに導入の手間を効率化し、継続してもらうかの工夫についても具体的に話され、新たに取り組んでみたいと感じられた参加者が多くおられたに違いない。
冒頭で述べられたHandling ability(物事に対処する能力)の3要素であるHead(知識)、Hand(技術)、Heart(情熱)をまさに網羅された講演であった。
(中京西部・岩見 美香)