採血時のトラブルとガイドラインについて
調査期間=2月1日~15日
対象者=代議員89人、病院勤務の医療安全担当者161人
代議員回答数=43人(回答率48・3%)
医療安全担当者回答数=72人(回答率44・7%)
協会では会員から医事紛争の相談を多く受けているが、その中で採血時の神経損傷が毎年報告されている。そこで採血時のトラブルとガイドラインについて、代議員に加え、病院勤務の医療安全担当者にも尋ねた。
採血時のトラブルも協会へ相談を
まず、採血時の神経損傷等のトラブルを尋ねたところ、代議員は「ある」が16・3%(7人)で、病院勤務の医療安全担当者37・5%(27人)と比べ半分以下であった(図1)。
トラブルが「ある」と答えた代議員7人にその事後対応を尋ねた。71・4%(5人)が「自院のみで対応した」と答えており、「保険医協会に相談した」も1人いた。一方、病院勤務の医療安全担当者は81・5%(22人)が「自院のみで対応した」と答えており、続いて「保険医協会に相談した」が18・5%(5人)いた。
トラブルが院内で発生すると、まず自院で対応して解決しようとすることは当然とも言えるが、協会としては、患者との関係がこじれる前に、ぜひ、協会に連絡をいただき、ともに紛争の拡大を防止していきたいと考える。
ガイドラインの活用を
採血法については日本臨床検査標準協議会が「標準採血法ガイドライン」を作成している。
採血に関するガイドラインがあることを知っているか尋ねたところ、代議員は「知っている」が18・6%(8人)で、病院勤務の医療安全担当者は65・3%(47人)が「知っている」と答えている(図2)。
次にガイドラインを「知っている」と答えた代議員8人にガイドラインの使用の有無を尋ねた。「使用している」は25・0%(2人)で「使用していない」が75・0%(6人)、「独自に作成したマニュアルを使用している」は0人であった。一方、病院勤務の医療安全担当者は「使用している」が23・4%(11人)と、代議員の回答率はさほど変わらないが、「独自に作成したマニュアルを使用している」が55・3%(26人)と最も多く、この点が代議員と大きく異なっている(図3)。
以上から、無床診療所よりも病院の方が採血に関するガイドラインやマニュアルを活用している様子が窺われる。なお、使用しているガイドラインについては、未回答の1人を除き、「標準採血法ガイドライン」を使用していると答えていいる。
採血時の神経損傷に関するトラブルについて自由筆記の形で意見を求めたところ代議員14人、病院医療安全担当者15人から回答があった。このアンケートで採血に関するガイドラインを意識した様子が窺えるとともに、初期対応やコミュニケーションの重要性を訴える意見もみられた。
採血時に神経損傷(疑いを含む)の事故が発生すると、まず患者にどのような手順で採血を施行したか説明をしなければならない場面が想定される。その際に、ガイドライン通りに施行したことを説明すれば、医療機関側に過失がなかったことに患者の理解を得る場合もあり得る。
もちろん、ガイドラインを説明しただけで患者の怒りや不満が収まるとは限らないが、日頃からガイドラインに目を通し、活用していただきたい。