開業規制で医師偏在は解決しない 地域経済と公的医療機関の再生を  PDF

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会第29回医師需給分科会は2月27日、第4次中間とりまとめを公表した。この間の医療法・医師法改定(2018年7月)に基づき検討内容が正式に確認されたことになる。

厚労省が第4次中間とりまとめを公表

偏在是正策の輪郭明示される

 是正策は、従来指標に用いてきた人口10万人対医師数を否定し、新たに医師偏在指標の算出方法を定める。算出方法は、三次医療圏・二次医療圏単位で、「標準的な医療需要」を性年齢階級別受療率を用いてはじき出し、医師数も性年齢階級別の平均労働時間を加味し、標準化したものを用いる。さらに患者流出入も反映させ、計算式とする。
 医師偏在指標を用いて、二次医療圏単位で医師多数区域・少数区域を設定する。加えて、医師多数・少数の三次医療圏も定める。全国の三次医療圏・二次医療圏を偏在指標を用いてランキング化し、上位33・3%を医師多数区域、下位33・3%を医師少数区域とする。
 これを使い、都道府県は2020年度から医療計画において医師確保計画を定める。医師少数三次医療圏、医師少数区域では医師を増やすことを基本にするが、医師の多いところから確保を図るのが望ましく、医師多数三次医療圏(≒都道府県)内の医師少数区域に、他の三次医療圏から医師を確保する計画にはしない。
 目標は、医師少数三次医療圏ならびに医師少数区域が、下位33・3%を脱するために必要な医師数を国が示す。

開業医も偏在指標

 診療所についても、外来医師(診療所医師)偏在指標を作成し、二次医療圏ごとにランキング化し、上位33・3%を外来医師多数区域と定める。多数区域での新規開業希望者には、都道府県への届出様式に、地域で定める不足医療機能を担うことに合意する旨を記載する欄を設ける。合意が得られない場合は、当該新規開業希望者を地域での協議の場へ出席要請し、その検討結果を公表する。
 診療科ごとの必要な医師数については、診療科と疾病・診療行為の対応表作成のためのデータ整理等が必要であり、そうした事務的作業を行った上で、今後議論する。

必要なのはどこでも医業成り立つシステム

 協会はとりまとめに掲げられた方針に、すでに批判的分析を行ってきた。いずれも事実上の開業規制によって、医師多数区域から少数区域への医師の移行を促すものである。医師偏在の解消の必要性について厚労省と協会の認識は一致している。だが、多数区域での開業規制で少数区域での開業が進むと考えているのであれば、非科学的である。
 必要なのは、全国どこで開業しても医業が成り立つシステムの実現、抜本的には地域自体の再生である。
厚労省、効果ない場合は新たな規制示唆
 今回の中間とりまとめには次のような文言が滑り込んでいる。「今回の外来医師偏在指標等による新規開業者の行動変容」に「十分な効果が生じていない場合には、無床診療所の開設に対する新たな制度上の仕組みについて、法制的・施策的な課題の整理を進めながら検討する」。
 これは、より規制的・強権的な自由開業規制導入を示唆する脅迫めいた記述である。

会員署名にご協力を

 協会は会員各位に、「医師偏在解決には〈開業規制〉ではなく地域再生と公的な医療提供体制再建が必要」とする署名を提起している。ご協力をお願いしたい。

【医師偏在指標 算出方法】
医師偏在指標 = 標準化医師数(※1)  地域の人口 10万 × 地域の標準化受療率比(※2)
(※1)標準化医師数 =Σ性年齢階級別医師数 × 性年齢階級別平均労働時間  全医師の平均労働時間
(※2)地域の標準化受療率比 = 地域の期待受療率(※3) 全国の期待受療率
(※3)地域の期待受療率 = Σ(全国の性年齢階級別受療率×地域の性年齢階級別人口) 地域の人口

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