丹後半島 心の原風景 第5話 辻 俊明(西陣)  PDF

白亜の灯台が美しい経ヶ岬

 丹後半島の最北端に位置する経ヶ岬には白亜の灯台が建つ。1898年(明治31年)にできた。ここへは宮津から路線バスで行ける。名は丹海バス経ヶ岬線。宮津から天橋立、伊根などを経て、途中のんびり海、山を見ながらの2時間400円。伊根までの1時間は外国人観光客で込み合うが、そこから先の1時間は乗客が誰もいなくなる神秘のバスだ。近年いろんなところにバイパス道路ができたが、伊根町蒲入から先は、何十年も前から変わらない狭い海岸道路が続く。この辺りはカマヤ海岸と呼ばれる絶景ポイントである。
 経ヶ岬付近では、フリー乗降と言ってバス停以外の場所でも乗降できる。バスが見えたら大きく手を振ればいい。1日4便しかなく、経ヶ岬に着いてもバス停があるだけで、雨風をしのぐ建物や売店など何もないので無計画にバスに乗らないようにしよう。停留所を降りてから灯台前の駐車場までアスファルト道を歩いて25分、そこからさらに灯台まで15分である。
 普通経ヶ岬には自動車で行く。最寄りの駐車場に着いても灯台はまだ見えず、そこから山道を15分歩くことになる。すると期待していたのよりずっと美しい灯台が目に飛び込んでくる。晴れた日には真っ青な海を背景に真っ白な神々しいお姿。海抜140メートル、前には海が210度広がり、地球が丸いのがわかる。灯台の透明なレンズに透明な空気と海、みんな透明になって一つに溶け合う。
 経ヶ岬灯台には別の楽しみ方がある。夜中に来て駐車場に車を停めよう。ここから灯台は見えず、周りに明かりがないから辺りは真っ暗。そこで真っ黒な上空をしばらく見上げていると、灯台からの明かりが光の束となって現れ、灯台の回転とともに光の束は空の彼方へ移動してゆく。まるでUFOが音もなく現れ、去ってゆくように見える。
 この現象が起こるには四つの条件がいる。①灯台の光が強いこと②灯台が直接見えないこと③回転式であること④灯台の位置が目線よりずっと上にあること。
 ここの灯台は全国で5台しかない最高級の第1等フランス製フレネルレンズを使用している。光源はメタルハライドランプとやらを使用し、光達距離は40㎞とか。なんだかよくわからないが、そこらにある灯台より桁違いに明るいことは確かだ。こんな強烈な光だからこそUFO現象が起こるのである。ちなみに①~④の条件を揃えた灯台は、私の知る限りではここだけだ。

経ヶ岬のバス停

広々とした駐車場。
ここからも海が見える

近くまで行けば灯台のレンズも見ることができる

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