国は、改正医療法・医師法法(2018年7月成立)に基づく医師の地域偏在是正に向け、物差しとしての医師偏在指標を策定。同指標を用いて〈医師多数区域〉〈医師少数区域〉を指定し、都道府県に医師確保計画を策定させるべく、医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会での議論を進めている。18年12月26日に開催された同第26回分科会では、すでに示している〈医師偏在指標〉とは別に、〈外来医師偏在指標〉が新たに示された。これを受け協会は自由開業規制に他ならないとする見解(関連3面)をまとめ、2月8日に厚労省と京都選出国会議員へ届ける予定だ。
都市部への偏り是正が名目に
改正法には、「地域の外来医療の偏在・不足等への対応」として、外来医療機能の偏在・不足等の情報を可視化すべく、二次医療圏を基本とする区域ごとに外来医療関係者による協議の場を設けること等が盛り込まれていた(改正医療法第4~5節他)。これが今回の〈外来医師偏在指標〉の根拠である。
提案された診療所医師の偏在是正策は、都道府県の医師確保計画と同様、2020年度実施が目指される。
国は、都市部への無床診療所開設の偏り是正に向け、医師全体の偏在の度合いを示す医師偏在指標(本紙3037号既報)だけでなく、より外来医療の実態を踏まえた指標=外来医療の偏在指標が必要であり、指標によって「新たに開業しようとしている医療関係者等が自主的な経営判断を行うにあたっての有益な情報として」「可視化」することができると述べている。
外来医療の偏在指標は、全体の医師偏在指標を参考に検討。外来の診療科別の指標については別途の討議とし、地域における外来診療の病院・診療所の対応割合も計算式に反映するとなっている。
開業届出用紙に「合意」欄?
以上を踏まえて提案された「外来医師偏在指標」が(図1)である。
この指標を全国335の二次医療圏ごとに集計し、上位〇%を〈外来医師多数区域〉とし、国は都道府県に情報提供する。新規開業希望者は可視化された情報を用いて、「自主的な行動変容を促」され、それが偏在是正につながるのだという。
その上で、偏在への具体的対応案として次のことが述べられる。
限られた医療資源を有効に活用する観点から、まずは、地域にどのような医療機能が不足しているか、地域ごとに議論し、可視化していく。その上で、外来医師多数区域では、地域に必要とされる医療機能を担ってもらう必要がある。そのため協議を行ってもなお、外来医師多数区域で診療所の新規開業を行う場合においては、在宅医療、救急医療、公衆衛生等についての機能を担うように求める。
ついては外来医師多数区域では新規開業者に対する「届出様式」に、地域で定める不足医療機能を担うことを合意する旨を記載する欄を設け、協議の場(地域医療構想調整会議でも可)で確認できるようにする。合意欄への記載がない場合は会議への出席を求める。
主体的開業規制のシステム化
外来医師多数区域設定の目的は、開業規制それ自体である。
2018年から、京都府では京都市地域医療構想調整会議に京都市を4ブロックに分けた会議が新設され、議論がなされている。そこには地区医師会やブロック内の病院、介護関係者も参加し、地域の医療資源にかかる実状の共有が図られている。こうした協議の場を通じ、需給にまつわる課題が掘り起こされ、共有され、京都府をはじめとした自治体が中心となって、課題解決が図られるなら歓迎されよう。
だが万一、仮に外来医師多数区域における医師の新規開業についての協議の場として、そのようなブロック会議が活用されるならば、会議の性格は大きく変わることになるだろう。
文字通り、地域の関係者による主体的な開業規制のシステム化である。
これまでの開業医医療の否定に
外来医療の不足する地域への医師確保は必要だが、あまりに安易に自由開業規制が論じられている印象が拭えない。
医師団体として訴えるべきは、医師自身の開業の動機である。医業が成り立つか否かは開業にあたっての重要な尺度ではある。だが、それだけで医師はその地に開業するわけではない。
この地で開業し、地域の中で住民の生命と健康を支え、守りたいという初心もなく、開業する医師などいない。そうした初心が医師のモチベーションの根底にあり、開業医は地域を支え続けてきた。
今回の開業規制はそうした医師のメンタリティをも根本的に否定するものだ。