日々の記帳から決算書活用で経営管理  PDF

記帳税務講習会開く

 協会は、記帳税務講習会を10月25日に開催し、23人が参加した。講師は山口美賀公認会計士・税理士。記帳の他、税務や決算書の基礎的知識の理解を講習した。
 山口氏ははじめに、これからの時代は診療さえしていれば医療機関として安泰ではなく、経営をおろそかにすると廃院せざるを得ない可能性もある厳しい環境と説明。医療機関は営利企業ではないが、安定した経営は地域の医療を守り、それを通して社会責任を果たすことでもあり、そのような視点で医院経営を捉えてほしいと強調した。
 記帳とは経営や管理に関する記録を帳簿に記すことで、2014年1月からは白色申告者を含めた全ての事業者に記帳が義務化されている。山口氏は、「記帳することによって、医療機関を経営している実感を持つことができる。税務署の人手不足により、税務調査は減ってきているが、税務署から申告に関して指摘された際は根拠を示せるようにしておく必要がある」として、記帳の重要性を説明し、仕訳から総勘定元帳、貸借対照表や損益計算書作成の一連の流れと仕組みを解説した。
 事業に係る税金として、所得税、法人税、消費税等を取り上げた。個人診療所の事業所得では、租税特別措置法26条で経費を概算計算できるが、実額か措置法26条かを選択するためにも記帳が前提となる。法人化すると、診療所の収入から院長の役員報酬を引き、役員報酬からは給与所得控除をするので、所得が分散され税金を抑えることができる。所得税は累進課税、法人税は固定税率であり、一般的に所得が800万円を超えると法人化した方が得と言われるが、山口氏は、「法人化すると、社会保険料負担による人件費増加の可能性があること、税理士の顧問料が上がること等を理解した上で、解散や跡継ぎ等をどうするか将来も十分に見据えるよう」注意を促した。
 最後に、損益計算書を使って経営状況を把握する方法を紹介した。収入、営業損益、患者数、患者一人当たりの収入単価等の前年比較や、医業原価(薬品費、検査費等)、人件費、医業利益等の対収入比(営業指標率)を出すと現状が明確になる。山口氏は、その他、安全性分析やキャッシュフロー計算書を紹介し、医療機関の経営者として、設備投資や借入・返済のタイミングをどう考えて長期的に経営していくかを解説した。

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