医師の働き方改革 多種多様性を  PDF

 働き方改革関連法が6月29日成立した。
 この中には、労働基準法の歴史的な改革も含まれる。医師については応召義務などの特殊性があるため、適用は5年遅らされ2024年4月からとなった。すでに、厚労省では「医師の働き方改革に関する検討会」が設置され、現在検討が進められている。本法の趣旨は長時間労働を是正することであるが、一方で医師には地域医療を支えるという責務がある。長時間労働を避けつつ地域医療を守るという相反する二つの事象を成り立たせるには、どうすればよいのだろうか。
 コメディカルへのタスクシフト、AI、ICTの活用、複数主治医制でのタスクシェア等が今後議論の俎上に載るだろう。若い世代を中心にワークライフバランスへの関心が高まる中、魅力的な働き方が提示されなければ、医師を目指す有能な若者は逃げていってしまう。
 働き方改革に限らず、今般わが国で発生している種々の社会問題をみるとき、旧態依然とした日本型の労働生産性の低い社会文化が背景に根付いていることに気付く。すなわち高度成長時代に是とされた集団的画一行動がいまだに幅を利かせ、個人プレーは否定され、異なるものは排除され、出る杭は打たれ、みんな同じであることが美徳とされ、枠からはみ出る者はいじめられ、挑戦する人の足元はすくわれる。個別のニーズが重要視されるようになった昨今においては、こういった集団主義がまともな成果をもたらすとは思えない。したがってこの状況が改善されれば労働生産性は向上し、労働時間は短縮するだろう。
 いずれの社会においてもこれからは一人ひとりの個性、多種多様な生き方が尊重されなければならない。医師の働き方に関しても同様で、多種多様性が担保されている環境において、はじめて良きアイデアは生まれ、お互い協力しながら地域医療を支えていこうという意欲が湧くのである。働き方改革が医師へ適用される2024年は単なる通過点であり、それ以降も制度面、精神面を問わず改革は続くのである。

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