決議  PDF

 自殺者まで出した森友学園問題や加計学園をめぐる疑惑、防衛省における日報隠蔽、財務省事務次官のセクハラ辞職と疑惑発覚後の大臣による暴言や不見識な対応にみられるように、政治と官僚機構の劣化、人権感覚の鈍化はとどまるところを知らない。
 それでも安倍政権は新自由主義による国家改造と軍事大国化路線を突き進み、とうとう憲法改正発議・国民投票まであと一歩という事態へ至りつつある。
 戦後70年余、私たちの先人は戦禍による飢餓と貧困に傷ついた人々と手を携え、いつでも・どこでも・誰でもが保険証一枚で必要な医療を必要なだけ受けることのできる国民皆保険制度を勝ち取り、守ってきた。皆保険制度の原則である〈無差別平等〉〈必要充足型給付〉は、日本国憲法の平和的生存権の体現である。それゆえ現在の姿の国民皆保険は「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す新自由主義改革の弊害と見做され、給付率自動調整、審査基準統一化、新たな制限診療、地域別診療報酬、受診時定額負担、さらなる患者負担増等、より根本的な改革の標的となっている。
 さらに改革の矛先は皆保険の下で医療を担う医師のあり方にまで及びつつある。医師偏在の解消、医療費の地域差縮減を謳い文句に、新専門医制度や地域医療構想を使った入院医療改革、受け皿としての地域包括ケアシステム、果ては開業規制さえ進められつつある。一方、医師の働き方改革が課題となり、医師の労働の在り方も問われている。だが国政策の根底にある新自由主義改革と社会保障抑制策の転換なしに、地域の医療・福祉の課題は解決しない。医師の労働の在り方についても同様である。
 私たちは今こそ保険医運動の原点に立ち返る時である。誰一人戦争や苦役により生命を奪われず、生命と健康が守られる国の在り方とより良い医療・社会保障制度の実現を目指し、以下、決議する。


 一、 新自由主義改革・軍事大国化による国づくりではなく、すべての人が社会保障で生きられる国を目指すこと
 一、 保険で良い医療と医業の実現を阻む、給付率自動調整、審査基準統一化、新たな制限診療、地域別診療報酬、受診時定額負担、患者負担増等の改革を断固阻止すること
 一、 医師の働き方改革は、医師の生命と健康を守り、地域医療を守ることを両立できる方法で進めること
 一、 保険で良い医療と医業の実現に資する診療報酬・介護報酬を実現すること
 一、 新専門医制度を国民医療の質の向上と地域医療活性化を図るものにすること
 一、 誰もがその人らしい高齢期を生きられる公的なケア保障の実現をめざすこと
 一、 医業経営を脅かす損税解消策を早期に実行すること
 一、 原発再稼働、原発輸出等は直ちに止め、再生可能エネルギーへ転換すること
 一、 平和的生存権を否定する改憲を止めること
2018年7月29日
京都府保険医協会
第71回定期総会
(第195回定時代議員会合併)

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