副理事長 渡邉 賢治
社会保障に重き置く
「新福祉国家」目指して
診療報酬・介護報酬の同時改定、地域医療構想を含む医療計画、介護保険事業計画、そして国保の都道府県化。これらが一斉に4月から始動した。京都府は地域医療構想で、病床の削減はせず、機能別の病床数を明記せず、国が進める医療費抑制策には一線を画した姿勢をとっている。しかし、国の考えは、地域医療構想で病床機能分化を推進し病床数を削減することだ。そして、平均在院日数を短縮させ、その受け皿として地域包括ケアシステムを構築。さらには、国保の都道府県化で、都道府県に医療提供体制と保険財政を担わせ、地方自治体に自ら医療費抑制を進めさせることである。
国は、地域医療構想に沿った提供体制を進めるために知事の権限を強化した。このことは、医療機関が地域医療を守るために掲げた方針よりも地域医療構想が優先されることにつながる。また奈良県が検討している地域別診療報酬が実現すれば、保険医運動で勝ち取ってきた、地域差のない全国一律の保険給付が壊されてしまう。
7月、医療法および医師法改定法案が成立した。懸念するのは、新たに導入される「医師偏在指標」に基づいて、都道府県が「医師多数区域」と「医師少数区域」を設定し、医療計画上に「医師確保計画」を策定するとしたことである。これらは、事実上の開業規制につながるのではと危惧する。
また、働き方改革法案では、医師も時間外労働規制の対象とされた。医師の労働条件の改善は必要であるが、地域の医療が確保され、国民が安心して医療が受けられる、この両面を満たす改革が望まれる。
政府は「骨太方針2018」で、19~21年度を「基盤強化期間」としている。具体的項目には後期高齢者の窓口負担2割化、受診時定額負担導入など、患者負担増を促した。さらなる負担増は、今以上に経済的な事由での受診抑制に拍車をかけることは明らかである。協会は、社会保障を重視する「新しい福祉国家」を求め、それを実現させるために、今年度もさらに運動を強め、進めていきたい。