ユナシンの効果なく患者死亡
(60歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
A医療機関で市中肺炎と診断された患者が、当該医療機関へ紹介入院となった。SpO2=96%であった。ユナシン4・5gの投与を開始したが、血液検査の結果において肝機能障害が認められたため3gに減量した。その後の血液検査の結果、肺炎の改善は認められなかったが、炎症反応の悪化はなく抗生剤の効果がまだ現われていないと判断した。喀痰細菌培養ではグラム陽性球菌3+を確認。血液検査・胸部レントゲン上で抗生剤の効果は依然ないが、自覚症状もなく安定していたので、ユナシンを継続した。SpO2=92%まで低下していた。肺炎陰影の拡大があったため、非定型肺炎の検査・治療に移行し、抗生剤をブロアクトとクラリシッドの併用に変更した。その後、急性呼吸促迫症候群となりICUに収容し人工呼吸器管理とした。翌日に呼吸不全の改善、除外診断として、残される間質性肺炎の治療としてのステロイドパルス療法を開始したが、患者は死亡した。
患者側は、CRPが18・41㎎/dlで、その他のデータも悪化している事実を指摘して、適切な検査をして治療方針を変更すべきであったと医療過誤を疑い証拠保全を申し立てた。
医療機関側としては、患者側の主張通り、抗生剤をもっと早期に変更すべきであったと反省した。解決まで約2年7カ月間要した。
〈問題点〉
医療機関側は、ユナシンの効果は認められなかったが、患者の自覚症状がなく体調は良好に見えていたとのこと。しかしながら、CRP等のデータを見る限り、ユナシンの効果なしと判断して、薬剤の変更やCT検査の実施、呼吸器の専門医対診依頼などをすべきでなかったか。それによって患者を救命できた可能性も否定できない。
〈結果〉
完全に医療過誤を否定するには至らなかったが、証拠保全申し立て以降、患者側から一切のクレームがなかったことから立ち消え解決とみなした。