パワハラ、増える申し立て②
※本紙3026号の質問を再掲し、回答の続きを掲載します。
「開業以来3年の勤務歴、50歳前の職員から、パワハラにより適応障害となり、勤務できなくなったため、年休の消化、離職理由を医院都合によるとすること、解決金として給料の3カ月分を求める文書が診断書とともに送付されてきた。解決金は今月末までに振り込むことを要求している。後輩職員への対応がきついので主任が注意したことがきっかけとのこと」。このような相談が増えてきています。どう考え、どう対応すべきか。
◇違法性の判断基準は
一律にその基準を設けることは、難しいところもありますが、具体的な基準として
①業務上の必要性に基づかないもの
②退職強要目的など不当な動機・目的に基づきなされている
③職員に対して通常甘受すべき程度も超える不利益を与えている
が考えられます。結局のところ社会通念に照らし、個々で判断されることになります。
いくら目的が正当でも、その手段が不相当なものであれば違法と判断されることになります。裁判例では
①過度に感情的になっていないか
②人格を否定するような言動を行っていないか
③他の職員の前で晒し者にしていないか(メールでCCを付けて一斉送信することも)
などといった点を重視して判断されています。
◇使用者の安全配慮義務
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」(労働契約法第5条)こと。職員にとって働きやすい環境を保つよう配慮する義務があります。
被害を受けたと言う職員の心情を考慮すべきですが、その主観のみを過大に評価すべきでもありません。
職場におけるいじめ・パワハラは、目撃者や証拠がない場合も多く、事実認定の際には、当事者の供述に頼らざるを得ない場合が多く、慎重に吟味する必要があります。使用者がとるべき具体的措置として、迅速かつ積極的に実態をできるだけ詳細に把握する、そして場合によっては、防止策や被害者への謝罪などが考えられます。
◇日常的には
①使用者として目指す方向を明確にし
②それぞれの職員がなすべきことを具体的に設定して(分担と責任)
③その達成を支援し、優れている点を評価し、改善点があれば指導、援助する
以上のことを徹底することが、職員の育成、そして集団として機能させ、働きやすい職場環境を日常的に作っていく基礎になると思います。