協会は専門医会長との懇談会を5月12 日に開催。専門医会から10人、協会から6人が出席した。2018年度診療報酬改定をテーマに、協会からは改定の特徴と意義について解説し、各専門医会からは改定への評価と改善要望等について意見を聞いた。
妊婦加算にさまざまな意見
まだまだ矛盾抱える点数の是正を
内科:初診料の機能強化加算については、施設基準を満たした上で届け出るという煩雑さと複雑さが、日常の診療行為にそぐわないと感じている。薬価財源の本体充当はなく、院内処方の医療機関には直にマイナスの影響が出ている。自院では平均3・2%減であった。妊婦加算については、改定の中での位置づけが理解できない。オンライン診療料については、対面診療が診療の原則と考えており、今後の動きを注視したい。ベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期継続処方に対する減算も今後の経過を見ていきたい。
小児科:今回の改定における増点に関して、当地は子育て医療費助成が充実しており負担感はない。機能強化加算は届出の前提となる小児かかりつけ診療料の届出医療機関は少ない。小児抗菌薬適正使用支援加算は、これまで多くの小児科で行ってきたことであり、文書を渡して説明云々と言われても今更な感がある。
外科:創傷処置が増点し矛盾が改善したことは良かった。今後については複数手術の取扱いの整理を希望する。個別点数では、摘便が手間に対して評価が見合っておらず改善を望む。新点数は煩雑な要届出のものばかりで、届出ができなければ意味もない。妊婦加算だが、妊婦かどうかの確認が常に必要とは思われず、加算の本意が分かりかねる。
産婦人科:妊婦加算に関連して気になるのは、正常妊娠疑いでの妊娠検査は保険請求できないこと。妊婦については、未受診妊婦の存在が問題となっているので、是非紹介していただきたい。妊娠中の投薬については「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」がわかりやすい。産婦人科医会・学会として更年期障害を特定疾患療養管理料の対象疾患に追加するよう長年要求している。
眼科:在宅医療で複数医療機関が訪問診療を行うことができるようになったのは良かったが、要件や連携のとり方など使い勝手はいまひとつかと思う。糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性等で特定疾患療養管理料が算定できないことが不合理だ。コンタクトレンズは高度管理医療機器であるにもかかわらず、ネット等で処方箋なしで購入できることはおかしい。視力障害も起こっており看過できない。
耳鼻咽喉科:耳垢栓塞除去(両側)の点数が180点に上がったが、片側100点を2回算定する場合にはいまだ及ばず矛盾が残っている。処置点数としては、改定内容はこれだけしかなく由々しき事態だ。地域包括ケアの推進に関しては、嚥下や聴覚の問題への介入が期待されていると思うが、嚥下内視鏡検査の普及なども考えていかなければならない。
形成外科:創傷処置の点数引き上げは良かったが外来管理加算と同点数でもまだ矛盾はある。同一手術野の考え方は改善を望む。皮膚レーザー照射療法は、範囲が広い場合は3回に分けて実施するが、算定は一連で1回だけとなる。3カ月に1回の算定制限は不合理であり、せめて部位ごとでの算定を認めてもらいたい。妊婦加算は請求されることを避けようとする余り、妊婦であることを隠されることがあっては困る。
糖尿病:血糖自己測定器加算は、実際に測った回数に基づいて算定することとなっているが、複数月をまとめて算定する場合でも事前に算定しなければならないという矛盾がある。また、過去に遡っては算定できないので、余裕を持って器材を支給しているがゆえに受診がなかった月の使用分について請求ができないこともある。こうした部分について整合性がとれた内容にあらためてほしい。
透析:今回の人工腎臓の改定だが、一部腎代替療法の説明など評価できる点もあるが、総じて残念な結果となった。昨年秋頃に実施された非常に手間のかかる調査に協力し、仕入れ値まで正直に回答して出てきたのが中医協での「透析用監視装置1台あたり患者数が2以上3・5未満の施設が多い」との資料だった。それを元に3・5を基準に点数が下げられることとなった。地域によっては患者数に対しベッド数が足りない場合もある。効率を追求した訳ではないのに減点となるのは問題である。
循環器:生活習慣病管理料は、高血圧症の患者について、治療内容に変更がある場合は当該患者数を定期的に記録するとの要件を満たすのは相当難しいが、なぜそんなことが必要なのかは不明だ。心大血管疾患リハビリテーションの慢性心不全の基準に追加されたNT-proBNPが400pg/mL以上との基準は、一度でも満たせば良いのかどうか疑義がある。
◇ ◇
協会は、妊婦加算については妊婦であればいろいろと気をつけるべき点はあり、その配慮に対する評価としては妥当とは思うが、協会の代議員アンケート(6月10日報道)でもそもそも知らない医師が30%もおり、点数の意味合いが不明・分からないとの意見も複数寄せられた。算定しないというご意見もあるが、協会は一物一価として、同じことをすれば同じ報酬とすることを要求し続けてきたので、算定してもしなくても良い点数を設定してもらっては困ると考える。
本日承った各専門医会からの要望や意見は、検討の上できる限り保団連・協会として適宜要望し、実現につなげていきたい旨を伝えて懇談会を終了した。