私のすすめるナガラ近隣寺院観光  PDF

宇田 憲司(宇治久世)

座禅や経典読誦で自己修養を兼ね

 宇治の町中では、平等院があまりに有名で、その周辺を訪れる人が多い。対岸には紫式部を記念する源氏物語ミュージアムや莵道稚郎子命(うぢのわきいらつこのみこと)を祀る宇治神社や世界遺産の宇治上神社もあり、塔の島から緋塗の夢の架け橋・朝霧橋を渡って右岸に立てば、直ぐに辿り着くよう誘導路がし組まれている。そのまま川下に行けば、右側に高野山真言宗の正覚院があり、さらに行けば、「男前」の地蔵尊を祀り(図左)、重要文化財の宇治橋断碑を守る真言宗西大寺派の雨宝山放生院橋寺(拝観料500円)が静かなたたずまいを見せる。歩を川上にとり、宇治茶工房は福寿園の北壁に沿って登ると、真言宗智山派の朝日山惠心院が、さらに行き発電所の放水溝を過ぎて左側には曹洞宗の寺、東禅院に至る。寺庭に千体地蔵尊が祀られ参拝できる。
 その少し手前に曹洞宗は道元禅師の初開道場興聖寺(仏徳山観音導利院興聖宝林禅寺)の石門があり、琴坂を登る。
 ここ興聖寺では、毎月第1・3日曜午前に無料の坐禅会がある。2014年5月11日、中学2年生の学外写生授業で初めて来た時から久し振りに訪れ、次週に予告の坐禅会で初めて半跏趺坐で坐ってみたが、無念無想に只管打坐するなど夢のまた夢、妄想うごめく常の時と知った。定期の坐禅会にはあまり参加せず、週日の暇な折に観光(営繕志納に300円)を兼ね、自分専用の座布団を持ち込み池の傍に正座したり、禅師自作の本尊釈迦牟尼仏や文殊・普賢菩薩を祀る本堂の廊下に胡坐したり、煩悩も四苦36回・八苦72回、計108回かとゆっくり深呼吸をしてお茶を濁すなど自己修養もそこまでである。知祠堂では、手習い正観音像が祀られ、妙法蓮華経は観世音菩薩普門品偈を、また建立寄進して寺院再興を果たした永井尚政公の菩提寺として一族の位牌が祀られ、大悲心陀羅尼を唱えて供養する。開山堂の老梅庵では、永興詮慧和尚作の道元禅師の像が静溢に安置され、般若心経や修証義などを読み唱えるのに丁度よい雰囲気である。こうして一回りすると2時間くらいかかり、少しは六根清浄にもなる筈かと思えるが、月1~2回では効果もその時だけ、帰宅して仕事に戻るとまた元の黙阿弥である。なお、経典の読誦など古臭いと誤解される方もおられようが、声明・詠歌などは音楽と思えば聴いても唱えてもなかなかよい。よく持参するCD付きお経本シリーズ(双葉社発行)には、曹洞宗、真言宗、浄土宗、日蓮宗、浄土真宗のものがあり、入手は容易である。
 宇治の観光地図をみると、我が宇田医院の近所にも、日蓮宗や浄土宗などの寺院もあるが、いわゆる観光寺院ではなく訪れ難い。行っても「他宗の者が何しに来たか?」と訝しく思われぬかと心配にもなる。しかし、納経帳をみせ、御朱印をいただきたいと頼みながら参詣すると、せいぜいコレクターかとの誤解までで済む。奉納料は1枚300円が相場らしいが、お布施を少し追加して喜捨している。

図:過日、興聖寺に参詣時、この納経帳を示せば堂内拝観料が無料になると勧められ、お布施2000円で入手した(図右)。以後よく、方々の寺でも記帳してもらう(図左)。

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