小児診療に即した改定を意識して
小児科東道 伸二郎
今回の改定の重点に小児医療、周産期医療、救急医療の充実を盛り込んだとされた。充実の意味は、現実に即し変更することとみた。変更の多くは入院医療が中心で、①小児入院医療管理料1・2におけるがん拠点病院加算、緩和ケア診療加算の算定②小児特定集中治療室管理料の対象患者について、小児慢性特定疾病の対象患者については、20歳未満の患者まで拡大③入退院支援に係る評価について、対象である「退院困難な要因」に小児における退院困難な場合を加える。また、加算1の施設基準の一つである介護支援等連携指導料の算定件数を、小児における退院困難小児を専門とする医療機関や病棟に対応する要件に見直す―などである。
外来に限ると医療現場に即した改定が試みられている。小児科標榜が要件であった小児特定疾患カウンセリング料が心療内科標榜も対象と変更された。小児心身症児には通院しやすい環境ができるものと考えられる。小児科療養指導料(算定要件:小児科標榜)においては、従来、小児科を担当する医師が指導を行った場合に算定したが、小児科医以外の医療従事者(看護師)が指導を行った場合にも算定可能とされた。医療的ケア児を治療する医師の負担の軽減効果も期待される。産婦人科に限らず算定可能とした妊婦加算も同様の考えからと思われる。
小児かかりつけ診療料は電話等による緊急の相談に原則、自院で常時対応を行う要件で、育児に慣れぬ親の昼夜を問わぬ対応を強いる、働き方改革が提唱される以前の厳しい内容が組み入れられており、ハードルは医師の過労死レベル以上であった。今回要件が一部緩和された。高齢者と違い、小児の「かかりつけ医」の役割に緊急の相談が占める割合が意外と少ないことが理解されず、かかりつけ医の評価にぶれが生じた。今後さらに検討が必要な案件と思われるが、今回の改定は前回と比べ現実に一歩近づいた改正と評価することもできる。ただし、「かかりつけ医」に関する契約に患者側の理解が得られるかの問題は引き続き残る。
小児抗菌薬適正使用支援加算については、抗菌薬適正使用を説明する必要から検査数増加が予想され、保育園児数増加に伴う流行性疾患の多発に対応した迅速検査の増加傾向から、小児科外来診療料算定医療機関への経費の補填は当然必要となる。4割の非算定機関や他科には加算がなく、小児医療の抗菌薬適正使用をにらんだ改正とは異なる。
小児科診療に現実的な改正に、ヒトメタニューモウイルス抗原検査がある。前は画像診断で肺炎を疑った6歳以下に算定可能としたが、今回は胸部聴診所見で肺炎を疑った場合も加えた。小児科診療所の6割以上がX線診断装置を有していない現状からも現実に即している。
今後も今回のような小児医療現場に即した改定が望まれる。