厚労省医政局への要請に向けて、協会は医療提供体制に関して府内の病院長に緊急アンケートを実施。164の対象病院のうち24(公的病院4、民間病院20)の病院長から回答があった。実施期間は4月4日~17日。
地域医療構想プロセスに半数が「納得できない」
厚労省の示した「地域医療構想」の実現プロセスによると、医療機関の方針よりも地域医療構想が優先され、都道府県知事の権限が行使されるとされている。
これについては、半数近い46%が「納得できない」とした。付されていた意見には、「これを“経済統制”という」「現状を把握されているのか疑問」「診療の専門性や診療特性を無視したベッド数の調整になる可能性があり、医療の質低下を来すことを危惧」といった厳しいものであった。
一方で、「納得できる」は25%だが、「賛成ではないがやむを得ない」と積極的な賛成ではない意見もあった(図1)。
根本解決ないままの民間への移譲は「無責任」
国は、公立・公的医療機関が担ってきた過疎地域の医療や不採算部門の医療、高度・先進医療提供、医師派遣の拠点機能についても、地域の民間医療機関の状況に鑑み、可能なら民間に担ってもらうべきともとれる考えを示している。その上で公的医療機関を整理するとすれば、これまで地域で公的医療機関の担ってきた機能が後退しかねないことも考えられる。
これについては、「納得できない」が50%で、「不採算部門は構造的な改革がなされない現時点において公的機関が責任を持って担うべき。根本的な解決をみないまま、民間に移譲しようとする考えは無責任」「民間病院もすでに不採算部門を担っており、更に負荷が増えることに」「採算がとれなくても必要なものはあり、公で担うべき」などの意見が付されていた。
「納得できる」は25%。同じく25%の「その他」の意見では、「不採算部門は止むを得ないが、それ以外の効率性については評価すべきで、公的病院にあまりに多くの公費が投入され民間病院が同じ土俵で勝負するのはいかがなものか」「過疎地では公立、民間とも医師以外の人員が足りず、対応できる状況ではない」などがあった(図2)。
「認定社会貢献医」導入も半数が「納得できない」
国は、今国会提出の医療法・医師法改定法案において、都道府県知事が医師多数区域と医師少数区域を設定した上で、医師少数区域等で一定期間勤務した医師を認定し、認定医であることを広告することを認めるとともに、原則当該認定医(「認定社会貢献医(仮称)」)でなければ地域医療支援病院の管理者になれない仕組みを導入しようとしている。
これについては、「納得できない」は46%で、具体的には「管理者になる資質と過疎地域での勤務経験は関連がなく、医師偏在を安易に解消するため、交換条件として義務を負わせる仕組みなど受け入れられない」「医療の集中を過疎の打開案の一つとは考えるが、医師の自由度を束縛し専門性の低下につながる可能性があり、いい解決策とは思えない」など。
「納得できる」は17%にとどまった。38%を占めた「その他」の意見では、「医師だけいても何もできません」「名誉職で地域医療の経験が乏しく、具体的な観点のない医師が限られた期間だけ管理職になるのはどうかと思う。現場の叩き上げの医師を補完し合うような制度になればよいと思う」「医師少数区の定義が不明確でまだ具体性のない提案であり、判断できない」「無意味と考える」などであった(図3)。
規制的手法への懸念意見多数
国に対する意見・要望等についてもきいた。
審議会等に関して、「現場を全くわかっていない“学者”の参画を一考すべき」「現場をわかっている医療従事者の話を聞くべき」とする意見や、「国は現状をよく理解した上で医師が自発的に知識、技量を磨き、社会に貢献しようと思わせる魅力的なシステムを早急に整えるべき。上からの命令で束縛しようとする試みは必ずや失敗するであろう」「地域の事情を考慮する必要があり、国が画一的に枠にはめることは問題」「行政の勝手で強権的な手法に断固反対すべし」といった規制的手法への懸念のほか、「訪問診療の現状把握と将来展望の明確化を要望」する意見があった。
図1 地域医療構想での都道府県知事の権限行使
図2 公的医療機関と民間医療機関の機能変更
図3 「認定社会貢献医(仮称)」の導入等について