環境問題 137 太古の地球に原子炉があった  PDF

 1972年、アフリカのガボンで天然の原子炉の痕跡が発見された。東京大学からアメリカに渡ったアーカンソー大学の黒田和夫教授が、56年にこのメカニズムを予言していた。
 今から15億年~17億年前、50万年~70万年の間、断続的に核分裂連鎖反応が続いた。ウラン235の半減期は7億年。今から15億年以上前の地球に存在したウラン235の濃度は、3~4%と原発で使う核燃料とほぼ同じだった。核分裂連鎖反応を続けるには、原子核から飛び出す中性子の速度を落とし、また過熱を防がなくてはならない。ウラン鉱の周りを取り囲んだ地下水が減速材かつ冷却材となり、臨界状態を維持していた。これは人間が作った原発の原理と全く同じである。原子核エネルギーを解放するというプロセスも実は自然のカラクリの一部に過ぎなかったのだ。
 科学技術によって自然をコントロールできるという人間の思い上がりが、原発事故の悲劇を生んだ。人体に対する放射線の影響すらまだはっきりとはわかっていない。使用済み核燃料など放射性廃棄物の処理方法も決まっていない。放射性元素の半減期と人間の寿命とでは桁が違うことを考えれば、人間が責任を持てる技術ではないのは明らかである。
 電気製品の進化を考えると原発など必要ない。核発電に固執するのは、核抑止力に固執するのと同じである。人類として長生きしたければ、核兵器も核発電も捨てた方がいいのは明らかだ。もっとも、地球の立場からしたら、ちっぽけな人類など滅んでも痛くもかゆくもないだろう。私たちはもっと謙虚に自然と向き合い、原発があるがために今困っている人のことを思いやらなければならない。
(環境対策委員・河本 一成)

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