2016年1月に新潟市民病院(新潟市中央区)に勤務していた37歳の女性研修医が自殺。原因は過労死とされ、労災認定された。報道では研修医の月平均時間外労働(残業)時間は厚生労働省が「過労死ライン」と位置付ける80時間を大きく上回る約187時間だったという。大手広告代理店における過労自殺事件は、安倍政権をして働き方改革を打ち出させる契機となったが、同様に過酷な現実は医療界にもある。
勤務医の過酷な労働条件に光が当たり、是正策が検討され始めたことは歓迎すべきだ。だが一方、岐阜県中津川市の市民病院等では、労基署の是正勧告を受けて医師を含めた医療スタッフに時間外手当2・4億円の追加支給がなされたこと。過労死ラインを超えないため、診療制限に踏み切る病院の動き等が報道されており、「規制だけでは地域医療が崩壊する」との指摘があるのも事実である。
4月の診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会の議論でも、働き方改革が俎上にあがり、診療側は各病院が勤務医の負担軽減を実行し得る報酬上の対応を求めた。医師の超過勤務に対し、適法に手当てを支払うために相応の報酬が必要であるのは言うまでもない。また医師不足に喘ぐ地域や中小の病院からは、実効的な医師確保対策を講じないままの長時間勤務是正は困難との声があり、これも真っ当な意見といえるだろう。
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