遠隔診療(オンライン診療)について
対象者=代議員89人、回答数=30(回答率33・7%)
調査期間=2017年12月19日~2018年1月5日
9割がオンライン診療興味なし
2017年12月1日の中医協において、①オンライン診療の場合の再診料、特定疾患療養管理料等の医学管理等について、対面診療した場合よりも低い点数の区分を新設する②電話再診の評価をオンライン診療よりも引き下げる―という2018年度診療報酬改定に向けての提案がされたことを受け、「遠隔診療(オンライン診療)」について、代議員の先生方のご意見を伺った。
これまで、遠隔診療とは、①専門医が他の医師の診療を支援するもの②テレビ電話等を介して行われる医師と患者間の非対面診療―に大別され、「直接の対面診療を補完するもの」と位置付けられてきた。このうち②の対象患者は1997年12月24日厚労省健政局長通知「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」に示されており、ア.離島、へき地等の通院困難な理由があり、遠隔診療でなければ当面必要な診療を行うことが困難な患者、イ.病状の安定した慢性期疾患の在宅患者―の二つに限定されてきた。
一方、政府の規制改革推進会議は、13年以降、「医療ICT化の推進」を方針に掲げ、民間営利企業によるICTを活用した医療分野の新規産業化を後押ししてきた。PCやスマートフォンを利用した診療を行うためのシステム開発が進み、医療機関に普及させることができれば、民間企業は間接的に診療報酬から利益を吸い上げることができるし、規制改革側としても、現状の対面診療を非対面診療に置き換えることで、最大の狙いである医療費抑制が実現できると考えたと思われる。これを受けて15年8月、厚労省医政局長から「97年通知で規定している対象患者は例示に過ぎず、遠隔診療の対象患者はこれに限定されない」という、それまでの解釈を拡大する事務連絡を発出した。
これらの動向を受けて、16年以降、都市部を中心にビジネスパーソン等をターゲットとした遠隔診療「オンライン診療」がビジネス展開され、会員各位宛にもDM等が頻繁に送付される現状となっている。
オンライン診療そのものに対する考え方や、オンライン診療の導入により電話再診が引き下げられることに対する会員の受け止め方を中心に意見を伺った。
回答者は内科系が63%、診療所が93%(図1・2)。
対象患者拡大解釈は6割「知らない」
遠隔診療(オンライン診療)の対象患者について、離島・へき地等の通院困難な理由があり遠隔診療でなければ当面必要な診療を行うことが困難な患者、病状の安定した慢性期疾患の在宅患者以外にも、多忙を理由に通院しない、通院していたが時間を惜しんで通院を止めた慢性疾患の患者等も対象となるという解釈を知っていたのは37%、知らなかったのは63%と知らないが6割を占める(図3)。
点数算定7割「知らない」
オンライン診療は初診では取り扱えず算定できないこと、電話再診料、投薬料しか算定できないこと、再診料の外来管理加算、特定疾患療養管理料等の医学管理等の費用も算定できないことを知っていたのは30%、知らなかったのは70%とオンライン診療にかかわる点数算定も7割が知らない(図4)。
予約診療の差額徴収可能は9割「知らない」
オンライン診療を予約診療(選定療養)で行った場合、地方厚生局に事前に報告することで予約診療(選定療養)に係る差額徴収が可能なことを知っていたのは7%、知らなかったのは90%となっている(図5)。
診療報酬上の評価どちらともいえないが5割
オンライン診療の再診、外来・在宅での医学管理を、新たに診療報酬上評価することは、賛成27%、反対20%、どちらともいえない53%である(図6)。
電話再診料引き下げ反対4割
電話再診料とオンライン診療の再診料の水準について、電話再診料は引き下げるべきではない40%、同程度の評価とすべき23%、オンライン診察の再診料より引き下げるのは仕方ない20%、分からない13%となっており、電話再診料より引き下げるべきではないとの意見は4割にとどまった(図7)。
対面診療より低く評価すべきは4割
オンライン診療による再診、外来・在宅の医学管理の評価について、再診料、外来・在宅の医学管理の評価に点数格差、区分を設けるべきではない23%、対面より低く評価すべき40%、分からない27%、その他7%で、対面より低く評価すべきが4割である(図8)。
専用システム導入で高額費用6割「知らない」
オンライン診療について、専用システムを導入した場合、高額の費用がかかる場合があることを知っていた37%、知らなかった63%であり、6割が費用のかかることを知らない(図9)。
代議員の9割が興味なし
オンライン診療の導入に興味あり7%、興味なし93%(図10)興味がない理由は視診、聴診の情報が少なく、触診、打診もできないからという回答が約8割を占めた。
6割が薬剤の郵送に反対
医療機関から薬剤を郵送することについて、反対63%、賛成37%(図11)。賛成理由は患者の利便性を考慮するとした方が9割、反対理由では医師以外の「なりすまし」による不正コピー薬剤の販売等、犯罪が懸念されるとした方が約8割となった。
患者情報少なく医療事故を危惧
全体としての自由意見では、オンライン診療での事故が起こらないか心配である。死亡診断がオンラインでも可と聞くが、それで責任が持てるか不安である。できる限り患者に触れて診療すべきと考える古いタイプです。便利の中には危険がいっぱい。安全が最優先です。など、医療事故を懸念する声が多く寄せられた。
協会はこれらの結果を受け電話等再診料の引き下げを行わないよう求める要請を厚労相、中医協委員らに1月19日に送付した。
図1 主たる標榜科
図2 開設形態
図3 慢性疾患の患者等も対象となる解釈
図4 電話再診料、投薬料しか算定できない
図5 予約診療に差額徴収が可能(要届出)
図6 医学管理を新たに診療報酬上評価する
図7 電話再診料とオンライン診察の再診料
図8 再診、外来・在宅の医学管理の評価
図9 専用システム導入時の高額費用について
図10 オンライン診療の導入に興味は?
図11 医療機関からの薬剤郵送について