患者の高齢化に伴い、医療機関内における高齢者の転倒・転落あるいはリハビリ事故が後を絶たない状況が続いている。そうした施設事故が発生した場合、会員から事故報告を受けて、協会の医療安全対策部会が対応に乗り出すわけだが、一部の会員医療機関からは「手術の失敗とか誤診をしたわけではないのだから、損保会社の社員を送り込んで(協会の聞き取り調査を省いて)素早く解決してほしい」と要望されることが稀にある。
協会は転倒・転落事故もその他の医療事故と変わらず、報告いただいた場合は、当該医療機関から担当理事者が、協会の事務所で直接話を聞いて、最終的には「医師賠償責任保険処理室会」で検討して過失の有無とその程度から、事故の反省点・予防策まで助言させていただくようにしている。やはり、直接お会いしてお互い目を見ながら話を聞かないと見えてこない「真実」もある。確かに手術ミスや誤診から比べると、転倒等の施設事故は軽度に感じられるかもしれないが、当該患者が高齢者の場合は、転倒→骨折→寝たきり→死亡といった経過を取ることもそれほど珍しいことではない。
医事紛争に遭遇された会員からすれば、一刻も早く解決を願うのは当然のことである。そこで、最小限の「手続き」のみで、とお考えになるのだろうが、やはりここは慎重に考えていただきたい。協会としても早期解決は常に念頭に入れているが、必要最小限の調査を省略すると、かえって紛争拡大となる可能性も大きくなると経験的に言える。また、医療現場を熟知しない損保会社に調査を一任する一種の怖さもありはしないだろうか。
協会は医師による医師のための団体である。万一にでも会員にトラブルが発生した場合は、一見、面倒に見えるようでも、最善と思われる方法を提示して、会員とともに解決していきたいと考えている。今後とも協会の医療安全対策をよろしくお願いしたい。
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