はじめに、京都府が第1期計画以降、医療費適正化計画の呼称を用いず、同計画が医療費抑制自体を目的としない立場で策定されてきたことを評価したい。
国にとって、第3期の医療費適正化計画は従来以上に重い意味を持っている。2025年の地域の必要病床数を機能別に設定させる地域医療構想とそれを含む第7次医療計画、市町村国保の都道府県化と連関するものへ位置付けが強化された。2018年度以降、京都府も含め都道府県は、医療提供体制と国保財政を一体的に管理し、適正化計画に定めた医療費目標の達成に向けた努力を求められる。国にとって医療費適正化計画は、そのシステムの中核を成す。
府は中間案の47ページ「ⅳ医療費の見通し」の記載にあたり、1ページに「医療費については」「国が制度の設計・実施をしており」、「都道府県では…都道府県単位の医療費総額を把握できません。このため、第3期見通しにおける医療費の見通しについては…国が示すデータと手法により推計する」と記す。これは重大な事実を語っている。国の準備した医療費の推計ツールは国の政策意図に基づいて設計されている。それに対し、計画策定主体である都道府県はそれに抗して独自計算を行おうとしても、最低限のデータが与えられていない。よって国は意図する医療費水準を目指し、都道府県を競わせることが可能となる。
第3期計画にあたって国が重視するのは「地域差縮減」である。府が2017年6月30日の懇話会第3期第1回で資料配布した厚生労働省保険局資料「医療費適正化基本方針の改正・医療費適正化計画について」にも、国が示す手法=医療費の見込みの推計式は、「外来医療費の1人当たり医療費の地域差縮減を目指す取組みの効果」(表)を踏まえたものであると書かれ、そのための糖尿病の重症化予防の取組であり、重複投薬、多剤投与の適正化である。さらに、地域差半減のためにはさらに0.2兆円を削減する必要があり、地域差半減に向けては今後追加で取組目標を検討するとも記されている。
地域差半減が経済財政諮問会議による骨太方針2015が掲げた目標であることは言うまでもない。国は、入院医療費は病床数と高い相関性があり、入院医療費が医療費地域差の要因であると捉えている。地域医療構想を通じ、入院医療費抑制にはすでに手を打った国は、さらに外来医療費抑制に向けて、自治体へ努力を求めているのである。
しかし、医療費の地域差があることがなぜ問題なのか。患者・対象者の個別性に応じて、医療や福祉は提供され、それと同時に、地域の抱える社会的・経済的課題が、受療行動や診療・投薬の在り方に影響を与えている。金額だけを捉えて、その地域差を問題視することは、その向こうにある地域の姿や一人ひとりの住民の存在を無視することに他ならない。
私たちは京都府に対し、誰しもが健康に生きられる国、地域を展望した医療政策推進を求めたい。法定計画であるがゆえに、国の準備した将来推計ツールを用いた医療費の見通しを掲載せざるを得ないことは理解できるが、この見通しが間違っても目標のごとく扱われることのないよう、府の政策がそのような数字に引きずられることのないよう、強く求めておきたい。
なお、中間案には「Ⅲ健康長寿の実現に向けた目標および施策等並びに関係機関との連携・協力」として、保健医療計画等の他計画と整合的な施策が記載されている。それらの計画についても、中間案にある「住み慣れた地域で生涯にわたり安心して子どもを生み育て、健やかに安心して生活できる社会を実現する」ための施策として検討されるよう、あわせてお願いしたい。
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