特別企画 辰巳院長にきく 南丹医療圏での医療提供充足目指し  PDF

辰巳 哲也 氏
京都中部総合医療センター院長
1983年、京都府立医科大学卒業。2004年より現職。
専門は冠動脈および末梢動脈疾患のカテーテル診断・インターベンション治療、心不全・不整脈の治療、血管・心筋再生医学、動脈硬化の予防医学、心筋代謝・細胞生物学。

 地域の医療現場で抱える課題や実情を語っていただくシリーズ・地域医療をきく。第3回は、特集Ⅰの船井地区の地域紹介に関連し、拡大版として京都中部総合医療センターの辰巳哲也院長にお話をお聞きした。

医師不足と偏在が大きな課題

――南丹医療圏における地域医療の課題について、辰巳院長はどのようにお考えでしょうか。
 辰巳 医師不足、あるいは診療科偏在がこの医療圏はずっと続いています。当院単体としてみれば80人ほどの医師がいますが、地域の最終拠点病院としては、充足しているとは言えません。また、医師だけでなく看護師不足も大きな課題の一つです。
 診療科の問題でいえば、脳外科が休診状態です。非常勤で週2回ほど外来をお願いしていますが、入院患者さんがとれません。脳神経疾患は脳卒中や脳出血などにとどまらず、内科疾患に神経症状などを伴ったものが多い。こうした事例から、やはり脳外科医が不在というのは救急医療においてもマイナスだと感じています。
 現在、京都府の医療計画が策定されつつあります。南丹医療圏でもその医療計画について議論を行っているところですが、脳卒中を含む脳神経疾患については、基本的に当院で診療を行い、血管内治療をさらに必要とする場合は高次医療機関へ2次搬送を行うということを確認したばかり。不足した診療科はあるにせよ、できるだけ地域医療に貢献したいと考えています。

――地域の医師からは拠点病院ということで、頼りにしているというお話を耳にします。
 辰巳 大変ありがたい話です。地域の開業医の先生方と、顔のみえる関係を構築したいといろいろな会合に顔をださせてもらっています。
 当院は17年度の重点目標において、1点目で医師・看護師の人材確保、2点目で地域の医師と顔の見える関係の中で地域医療支援病院となる目標を掲げています。できれば病院のすべての科の医師に、地域の医師との関係を構築してもらい、病診連携のさらなる強化を目指したいと考えています。そして、この地域で医療が完結できるようにしていきたいですね。
 もちろん、より高度な医療、3次救急などが必要な患者さんは、医療圏を超えて、その医療を提供できる医療機関へ搬送させてもらいます。しかしながら、本来地域で提供できるはずの医療が提供できず患者さんの流出が続けば、医療圏の再編につながりかねません。
 再編自体が問題だとは思いませんが、もともと南丹医療圏は面積が広く、無医地区が3つ、無歯科医地区が4つほど存在します。ご自身で他所に通院できる患者さんはいいですが、今後高齢化が進む中、医療にアクセスできない患者さんが増加しかねません。そうした意味からも、やはり地域完結型の医療を目指すことが使命だろうと考えています。地域の患者さんに必要な医療を提供できる。それが私の願いです。
 ただ、例えば循環器内科などでは600例を超える心臓や末梢血管のインターベーション治療を行えていて、府内においてもトップレベルの症例数でしょう。消化器でも大腸がんなどの症例数が増加しているし、なにより腹腔鏡手術数が増えていて高度な低侵襲の医療を提供できる体制が整っています。
 私が院長に就任した際に、がん診療に力を入れていく病院でありたいと公言していました。
 これに各科の医師が応えてくれて、がん治療においても地域に貢献できる体制が少しずつ進んできていると思います。
 こうした良い面は伸ばしていき、課題は少しでも解決できるようみんなで知恵を出し合っています。その一つが、看護師確保特命委員会の結成です。なぜ看護師を確保できないのか、退職の理由はなにか、労働環境の改善などテーマごとにワーキンググループを作り、課題の洗い出しをしています。すぐに結果がでるものではないですが、スタッフに心地よく働いてもらえる環境づくりを整えていきたいと考えています。

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