「町民全員がヘルパー資格を取ろう」  PDF

 玄野 在宅関係の講演会や勉強会に行くと、すごく参加者が多いですよね。しかし、話を聞いてみると「子どもには迷惑をかけたくない」とおっしゃる方がすごく多い。家で過ごしたいけど、家族の足かせになるのは…と言われる。
 吉田 それは介護保険の趣旨上、おかしいと思うんです。この制度は自立支援を目指した保険なんです。もちろん、家族の希望も聞かないとませんが、しかし家に帰るべき人は帰らないといけない。それはけんかしてでも。しかし現実には病院で医療を受けている高齢の患者さんは、治っても帰る場所がない。そのへんを国はどう考えているのか。
 垣田 国が在宅医療、地域包括ケアを進めようとしているのは、施設や病院ではお金がかかりすぎるからという理由からですね。実際には本当は家にいたいのだけれども、いろんな事情で施設に入らざるを得ない。家族のために行くというのは、まさに本末転倒だと思います。そういう意味では、介護保険制度が始まった当時、私がとてもよく覚えているのは、野中一二三町長が、町民は全員ヘルパー2級の資格を取得しようと言われたことです。在宅でみようという趣旨からだったと思いますが、それが今だいぶ違う状況に変わってきているんですね。
 廣野 一二三町長のやさしさから出た方針でしたね。演説を聞いていても、子どもが親の面倒を見るといった昔ながらの話をいつもされていました。そういう信念をお持ちの方でした。しかし町長のこの考え方はよかったけれども、質が問題だったと思います。資格を取った人たちが、どこまで真なる介護をやることができたのか。プロフェッショナルの介護士による介護とはやはり違っていたと思います。
 仁丹 続かなかったことをみると、無理のある方針だったんでしょうね。
 垣田 結局、この地域では施設も病院もあるということで、介護もそちらでやっていこうという流れになっているわけですね。 

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