― 第22回IPPNW世界大会参加記 ―
反核京都医師の会・代表世話人 三宅 成恒
さる9月4日から6日まで、英国のヨーク市で開かれた第22回核戦争防止国際医師会議(IPPNW)世界大会に参加した。ヨーク大学を会場に、世界40カ国、約450人の医師、保健の専門家が集まった。
IPPNW世界大会は、1981年の初開催以来ほぼ隔年開催され、私は2000年のパリ大会以後、連続参加した。今大会は核兵器廃絶にとってとりわけ重要な大会となった。
今年7月7日、国連で122の加盟国によって「核兵器禁止条約」が採択された。大会では条約採択のもつ意味、採択に至った経過、とりわけIPPNWをはじめ医師の果たした役割、そして今後、条約を如何に実効あるものにしていくかが論議された。
5日に「ヨーク宣言」が発せられ、条約採択を核兵器廃絶にとっての重要な「一里塚」と表した。宣言の中に、条約の核心部分である「核兵器を、それらがもたらす医学上、環境上また人道上の結末の故に、初めて明確に『悪』、『違法』と非難、宣告し、新しい強力な規範のもとで、核兵器保有国およびそれに依存する国々を縛っていく」と記述している。
条約は「人道上のイニシアチブ」と呼ばれる論議を経て、これまで核軍縮について核兵器保有国や核兵器依存国の戦略上、安全保障上に限定されていた論議を、核兵器自体がもたらす破滅的な医学上、環境上、人道上の結末についての論議に大きく舵を切ること、そう決意した国々、国際機関、市民社会のグループの同盟がここ数年、空前の広がりを見せ、力となって条約採択に結実したと言う。
IPPNW以外にも、世界医師会議(WMA)、国際赤十字(ICRC)、赤新月運動、国際看護師協会、国際公衆衛生機関など、世界中の多くの医療保健団体が核兵器廃絶決議を挙げて力になった。2009年に日本医師会議(JMA)も決議を挙げた。世界の医師は、思想信条を超えて「核兵器廃絶」で意思一致している。10月に、新たに世界医師会長に就任した横倉義武日本医師会長が大会最終日に壇上で決意を述べたことは偶然ではない。
いま北東アジアは、米国と北朝鮮の間の核による脅しで一触即発の危険な状態にあるが、本会議では、「軍備による安全ではなく、人々の信頼構築による安全保障を」、「平和や軍縮の文化を基盤にした社会の構築」、「紛争は話し合いで解決を」と、論議が平和主義で貫かれていた。
帰国すると9月20日には、条約を批准していく上での重要な一歩である署名がすでに50カ国以上に達していることが報じられた。
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