戦争か平和か、社会保障の見せかけの充実か真の充実か
京都府保険医協会 理事長 垣田さち子
9月28日、臨時国会が召集され、冒頭で衆議院が解散された。
今年に入って、森友・加計学園問題に端を発した安倍内閣に対する支持率低下は、一時30%台への落ち込み、不支持が支持を上回るというところにまで至った。政権運営が危険に直面したことで、8月早々に内閣改造。批判された“お友だち内閣”はやめ、閣僚経験者を多く配した「仕事人内閣」を作り「謙虚に丁寧に国民の負託に応える」と述べてからまだ2カ月も経っていない。
首相は、解散にあたって今回の解散は「『国難突破解散』。企業の設備や人材への投資を促す『生産性革命』、保育園の無償化、低所得者の高等教育無償化などの『人づくり革命』の二大改革をアベノミクス最大の勝負として進めるために消費税率10%への引き上げによる税収の使い道を見直す。少子高齢化という最大の課題を克服するため、我が国の経済社会システムの大改革に挑戦する。国民とのお約束を変更する以上、速やかに国民の信を問わねばならないので」と説明した。しかし、本当の争点は、もっと早い段階で分かりやすく報道されていた。それは、①消費税増税の税収使途変更による「全世代型」社会保障の実現(幼児教育・保育無償化等)②北朝鮮への圧力強化路線の継続③憲法への自衛隊の根拠規定の明記―である。
5年前、自民、公明、民主の三党合意で成立させた「社会保障と税の一体改革」では、増税消費税収は全て年金、医療、介護、少子化対策に充てると決め、200以上の関連法を変えてきた。しかし、その成果の実感は乏しく、我々医療現場の従事者は、「持続可能な社会保障制度構築のためだ」と言われる制度変更の中で、幅を利かせる自己責任論と一人ひとりがバラバラに孤立化させられてゆく冷たい社会のありように疲労度を増している。
この現実に対し、民進党からは、「オール・フォア・オール」を合言葉に、大きく社会保障に対するスタンスを見直す提案も行われていたが、ある日突然解党、分裂した。「希望の党」に合流した人々も多いが、この党が「オール・フォア・オール」の方向とは思えない。
そして、二つ目と三つ目の争点である北朝鮮問題やそれに対する国民の不安を盾にとっての憲法9条の見直しについては、与党と希望の党との間に大きなスタンスの違いは見られない。
我々は、今回の総選挙に際して、①安保法の廃止・9条加憲反対②9条の立場に立って北朝鮮問題を平和的に解決するための主導的外交③財源を確保した、社会保障の実感ある拡充―を求めたい。
我々の多くは、北朝鮮の問題について、軍事力で解決できる問題なのかという疑問を持ち、むしろ9条の平和主義の立場での平和の実現を願い、社会保障については、構造改革、新自由主義改革によって弱体化した制度の再建、充実を望んでいる。
選挙戦の構図は、3極と言われているが、争点は明確で、戦争か平和か。社会保障の見せかけの充実か真の充実かであり、それとの関連でどういう公約を掲げているかが焦点である。
会員各位の賢明な選択に期待したい。