遺棄毒ガスによる被害実態を調査  PDF

 続いて、毒ガス被害の実態について、内科医の藤井正實氏、神経内科医の磯野理氏、中国から来日した神経内科医の曽維民氏が報告した。旧日本軍が主に使用した毒ガスは、イペリット(マスタードガス)とルイサイトの混合ガス。2003年8月に発生したチチハルでの被曝事件では、44人もの被害者(うち、1人死亡)が出たと報告された。
 こうした被害者に対し、日本の民間による検診活動が開始。皮膚症状、呼吸器系障害などの実態把握とマスタードガスの発がん性を調査目的にしていたが、著しい自律神経症状の存在を発見し、これまでに自律神経障害、高次脳機能障害、筋力低下、易疲労性、視覚障害、抑うつ症状・PTSDを確認したと述べた。
 今までマスタードガスによる神経障害の例はないが、ヒ素を含むルイサイトなら中枢神経系に障害を起こす可能性があることを化学兵器禁止機関(OPCW)より指摘され、現在はルイサイトが中枢神経・自律神経障害の原因ではないかと考えていると報告した。
 2017年11月にはチチハル医学院附属第三医院(病院)の医師とともに検診活動を行うことを決定したことが報告され、本格的な日中共同検診の始まりとなることが期待されるとした。

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