競争煽り適正化狙う「保険者努力支援制度」 公的責任で国保運営支えるべき  PDF

 2015年5月に成立した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」により、来年4月から都道府県が国民健康保険(国保)の責任主体となり、財政運営等に中心的な役割を担うことになった。市町村は引き続き、資格管理、保険給付、保険料率の決定・賦課、保健事業等を担う。
 これに伴い、京都府は新たに「国保運営協議会」を立ち上げ、8月には中間案のとりまとめが実施された。中間案では、移管に伴い保険料が急激に変動する市町村には激変緩和措置を適用することや、市町村が保険料を決める際の目安となる「標準保険料率」を府内で統一化せず、市町村ごとに算定する方針が盛り込まれた。
 特筆すべきことは、「保険者努力支援制度」であろう。医療費適正化の取り組みに成果を上げた保険者を評価し、実績に応じた財政措置を行うものである。2016年度は約150億円、2017年度は約250億円を市町村に配分し、2018年度からは都道府県に200億円、市町村に約300~350億円を配分する見通しである。
 この支援制度の主な指標として、特定健診受診率、特定保健指導実施率、メタボ該当者と予備軍の減少、がん検診の受診率、糖尿病等の重症化予防、後発医薬品の使用割合、保険料収納率の実績と向上にむけた取り組み等である。中間案でも「保健事業の充実(健康寿命の延伸)」と題して、現状分析と今後の取り組みが記載されている。
 支援制度では、これら項目に点数が設定され、加算式で評価を行う。まさに都道府県各自治体の競争であり、国保料の収納率向上に走れば滞納世帯の生活実態を考慮せず、強引な差し押さえが行われるであろう。実際、中間案では、収納対策として京都地方税機構への移管の推進および連携が記載されており、「専門的知識を有する職員による一体的な債権確保」が必要であること、「未移管の市町村においては、機構への移管を検討すること」とある。本来、国は国保運営を十分に支えるだけの財源を国庫負担で捻出すべきである。

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