地域医療構想を盛り込み効率化の実行性強化
2018年度からの第7次都道府県医療計画策定に向け、自治体の協議が本格化している。京都府も7月7日、第1回の医療審議会医療計画部会を開催した。
地域医療構想達成を目指す「医療計画」という性格に
第7次医療計画は、従来以上に現実の地域医療の姿に深くコミットし、計画達成が求められるものとなる。最大の特徴は新たに地域医療構想が計画に位置付けられることである。
3月31日付の厚生労働省医政局長通知(「医療計画について」医政発0331第57号)は、「質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステム」構築を目指す地域医療構想の「達成に向けた取組を進めていくことが求められている」と述べている。
医療計画は、1985年の第1次医療法改正により、医療資源の地域偏在の是正と医療機関の連携の推進を図るため、全都道府県に策定義務の課せられた法定計画である。
都道府県は2次医療圏を設定し、圏域ごとに「基準病床数」を設定する。それを超える地域では病床規制策として、病床の開設・増床の中止を都道府県が勧告することができる。
つまり、地域医療構想導入以前から、医療計画は本質的に提供体制の効率化・合理化を目指すものであり、国にとっては医療費抑制ツールの一つなのである。それに加えて、2025年の構想区域(≒二次医療圏)単位の必要病床数を、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の機能別に数字で定める地域医療構想が計画に盛り込まれる。同計画の実行性強化が目指されるのは間違いない。
地域医療構想が盛り込まれることで、医療計画は地域包括ケアシステムも視野に入れたものになる。とりわけ在宅医療と介護保険サービスの供給調整が課題となるであろう。
また「医師」に関しての記述も注視が必要となる。医療従事者の確保について、通知上の大きな変更はないが、厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」が打ち出した「早期に可能な偏在対策」が計画に影響してくることは確実であろう。
それらを踏まえ、以下に「医師」と「在宅医療」に関する国の議論状況を紹介しておきたい。
キャリア形成プログラム策定義務化と医師のデータベース化事業
医師需給分科会は「早期に可能な偏在対策」として大きく二つのことを求めた。
一つは、「キャリア形成プログラム」の策定である。(図1)
これは、主に医科大学・医学部における「地域枠」の医師(医学生)を対象に都道府県が策定する初期臨床研修から専門研修にかけ、医師不足地域の病院も含めてローテートする就業プログラムである。これにより若手医師が地域医療での経験を積むことと、医師不足地域の医療確保の同時達成を目指す仕組みである。
同プログラムはすでに多数の都道府県が策定しているが、医師需給分科会の意見を受けた「医療計画の見直し等に関する検討会」は6月30日の会合の席上、それを義務化し、第7次医療計画にも盛り込む方向で合意した。今後、社会保障審議会・医療部会に報告し、都道府県などに関係通知を発出し周知が図られる見通しである。
言うまでもなく、このプログラム形成作業は同じく18年度に実施予定の新専門医制度による研修と密接につながるものであり、各診療領域の研修プログラムとの関係が都道府県の検討課題となる。
二つは、「医師の地域的な適正配置のためのデータベース化事業」である。
国は2017年度予算を確保し、医籍情報、医師届出票、専門医情報を統合し、都道府県が医師確保に活用可能なデータベース構築を進める。これが実現すれば医師免許取得以降の一人一人の医師の研修・就業の動向を、国・都道府県が把握可能となる。医師需給分科会が今後検討するという法改正を含む抜本的な医師偏在対策において、保険医定数制や自由開業・自由標榜の見直しが射程に入ることを想定すれば、データベース事業がそうした医師管理政策に本格活用される懸念がある。
在宅医療推計と介護保険制度における医療・介護連携
6月30日の「医療計画の見直し等に関する検討会」は在宅医療についても、医療計画上の新たな取り扱いを議論し、第7次から書き込ませる方向で確認した。(図2)
同時に発出された「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(医政地発0331第3号 厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)は、在宅医療の体制構築の一環に、市町村が介護保険制度の保険者として進める「包括的支援事業」に加えられ、18年度から完全実施となる「医療・介護連携推進事業」を位置付けた。そこでは、在宅医療を担う医療機関と地域における他職種連携を担う拠点(地区医師会を想定)が協力し、24時間体制で在宅医療を提供する構想が描かれている。
また在宅医療の整備目標設定にあたっては、医療サービスと介護サービスが、地域の実情に応じて補完的に提供されるよう、都道府県や市町村の医療・介護担当者、地域医師会等の関係者による協議の場を設置して検討するよう求められている。
医療計画上の在宅医療体制構築は、市町村による介護サービスの計画と一体化して進められる。その中核的な存在に地区医師会が置かれるものと考えられる。
しかし何度でも指摘せねばならないのは、国は在宅医療の整備目標設定の前提に、地域医療構想に向けて示した慢性期の医療需要推計が用いられるものと考えており、それは現実の地域医療の体制を無視したものであるということだ。
国の慢性期・在宅医療推計は、もともとの高齢化の進行に伴う需要増に加え、病床効率化や平均在院日数等の入院医療改革がもたらす影響、さらに一般病床のうち、医療資源投入量(入院基本料を除く診療報酬の出来高点数)175点未満、療養病床(医療型・介護型共に含む)のうち、医療区分1の70%、入院受療率の地域差の解消等、極めて政策的側面が強いものである。地域医療の現実から乖離した机上の計算式ではじき出された新たな需要を、都道府県と市町村が計画上も現実的にも受け止めよという話なのである。
2018年度へ ― 京都府・市町村が動き出す
京都府は第1回計画部会を開催し、医療計画見直し議論を開始した。当日示されたスケジュールによると8月の第2回以降、ほぼ毎月の部会開会が予定されている。12月の第5回会合で中間案審議、医療審議会本体への報告、議会報告を経てパブリックコメントを実施。18年2月議会には最終案を示す模様である。
また、京都府は介護保険事業支援計画も含めた「高齢者保健福祉計画」、医療費支出目標設定が求められる第3期医療費適正化計画(「中期的な医療費の推移に関する見通し」)や「国保運営方針」策定作業も進めることになる。さらには構想区域ごとの「地域医療構想調整会議」も近く再開され、市町村も介護保険事業計画策定に向けて動き出す。
京都府と府内市町村が一斉に18年度の医療制度転換に向けて大きく動き始めた。
協会は、情報把握に努め、医療・福祉の保障を前進する立場から、意見表明をさらに強める。
(図1)
出典:医療従事者の需給に関する検討会第10回医師需給分科会資料 「早期に実行可能な医師偏在対策について」(17年6月15日)
(図2)
出典:第11回医療計画の見直し等に関する検討会資料 在宅医療の体制構築について(17年6月30日)