副理事長 林　一資

京都の医療安全は保険医協会から
医事紛争の2016年度状況を踏まえて

　2016年度府内の医事紛争の主な特徴を挙げると、次のようになる。
　①事故報告件数は41件で、前年度に比べ14件増加しており急激な増加となった。ただし、ここ数年は件数が年度ごとに増減を繰り返し（グラフで表現するとジグザク状態）、医事紛争が増加傾向にあるとは一概に断定できないだろう。②事故報告数の病診比率は病院5対診療所3で、病院の増加が目立った。③全事故報告中、96・9％がすでに解決しており、依然として解決率は高水準を保っている。④複数回の紛争報告をされる会員医療機関が増加傾向にある。
　これらのデータを見ると、かつてのように医事紛争数はおよそ10年ごとの単調減少・単調増加といった単純な傾向・構造ではなくなってきており、将来の予測がやや難しくなってきている。医療安全に限って言えば、2000年代後半から言われていた医療崩壊は一応の終結を迎えたと判断してよいだろうが、最近の医療事故の報道も産婦人科領域をはじめ、ショッキングなものが散見されている。マスコミの報道が医事紛争の件数に大きな影響を与えていることは、先の医療崩壊時にすでに言われていることである。つまり、将来的な不安は払拭されない。協会は過去45年分の統計データから、17年度ごろに紛争の急増が起こる可能性を示唆してきた。この予測が大きく外れることを願うばかりである。
　もちろん、願うだけで医療安全が遂行できるはずはない。協会は半世紀以上も医療安全に取り組んできた、全国的にも稀にみる医療団体である。実績も確かなものがあると自負している。会員各位にとっては、他者と比較もしづらく、協会のどこが具体的に良いのかわかりにくい面もあるだろうが、実際に医事紛争を経験されなくても、協会の予防対策にかかわるシンポジウムや研修会、出版物をまずはあらためて確認していただきたい。必ず「協会ならでは」の経験、考え方をご理解いただけると思われる。
　最後に、不明な点はいつでも事務局にご連絡いただければ、個々に応じた相談態勢を常に整えている。京都の医療安全は協会から始まったと言っても過言でなく、これからも会員本位の医療安全を目指していく所存である。