地域医療をきく!  PDF

 在宅医療が推進され、地域完結型医療が目指される中、京都府内それぞれの地域の医療現場で抱える課題や実情を聞こうと、インタビューを行った。まずはじめに、舞鶴市の梅原秀樹医師(舞鶴・梅原医院)と和束町の柳澤衛医師(相楽・柳沢活道ヶ丘診療所)を訪問した。

舞鶴編
小児科医減少に危機感
梅原 秀樹 医師

 2016年4月9日に開催した舞鶴医師会との懇談会で、舞鶴の病院の整備は進められているが、常勤専門医が減少。医療の重要な部分が空洞化しており、患者がいるにもかかわらず病院の病床が空床となってしまっているなど、医師不足を懸念する声が出ていた。その後の地域の状況を会長の梅原氏にお聞きした。
 梅原氏は傾向としては以前と同じで、舞鶴地域では開業医数は微増傾向だが、病院勤務の医師数は減少傾向のまま。各病院が医師確保に大変苦労されている状態だ。特に小児科医の不足が問題で、舞鶴市にある三つの病院のうち、舞鶴赤十字病院が小児科医0人となってしまった。舞鶴市が休日急病診療の対応を病院にお願いし、輪番当番制を敷いていたが、現状は回らなくなってしまっている。そのため舞鶴医師会にも声がかかり、小児科を標榜している開業医の協力を得ることになった。今のところ医師不足が原因で医療圏を超えて搬送という事態は少なく、何とか圏域内で対応できてはいるが、このまま減少すればどうなるか。
 舞鶴市での在宅医療については、現状では、なんとかカバーできている状態。孤独死などの事例はあまり聞かない。しかしながら、担う医師が増えているといった感じは受けない。
 舞鶴の病院再編では、各病院の協力のもとバスの運行を行うなど、有機的につなごうとアイデアなどを出し合い構想を練っている状況だ。市も積極的に考えており、今後議論がつまってくるだろうと述べた。

和束編
何もかもが足りない!
柳澤 衛 医師

 京都府が取りまとめた「地域における主な課題と対策―地域保健医療協議会における検討」(2013年3月)で、山城南医療圏の医師・診療科の不足状況として診療所・病院・医療施設従事医師・看護師等すべてが不足していると記載されている。また、圏域東部地域(和束町・笠置町・南山城村)は極めて厳しい状況との指摘もあり、この点について柳澤氏にお聞きした。

 柳澤氏は、以前より指摘されていることではあるが、病床数の不足、医師の不足などで住民は医療圏を超えて、主に奈良に流出している。この圏域は、特養での死亡数が多く、先進的に特養で看取りを行っている。病院の絶対数が少ないため、この対策として施設職員とのカンファレンスを通して、家族とともに「施設での看取り」を認めたことから、多くなった。回復期、慢性期を担う病院が少ないため、開業医がその部分を担い、また延長線上で在宅を担うことになる。しかし、開業医の人手も十分にあるわけではない。地方であっても患者は専門医志向、大病院志向で、ニーズとの折り合いも難しい。
 和束町は老々介護ばかりでぎりぎりの状態。この圏域は地域偏在が顕著で、圏域東部は在宅そのものが成立しにくいのかもしれない。とにかく、社会資源が何もかも足りない状態だと述べた。

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