減感作療法でアレルギーの治癒を目指す時代へ
第42回小児科診療内容向上会が、京都小児科医会、京都府保険医協会、鳥居薬品株式会社の共催で4月1日に開催された。「保険点数の留意事項と最近の審査事情」に加え、今回は2題の特別講演を聞くことができた。保険点数の変更がなかったので、川勝小児科内科医院の川勝秀一医師からは、初診料を算定できる間隔や、保険病名を付ける必要のない投薬ルールなどの解説があった。短い時間ではあったが、実は一番聞きたかった内容であり好評であった。特別講演は「子どものうつ病 その診断・治療・予防」を長尾こころのクリニック院長の長尾圭造医師から、「アレルゲン免疫療法(アレルギー性鼻炎・気管支喘息)〜治癒を目指すステージへ〜」を聖マリアンナ医科大学小児科の犬尾千聡医師から聞くことができた。
小児科診療内容向上会レポート
長尾氏の講演では、日本は人口減少に直面し、少子化の最中、子どもたちの健康は、体のみならず、精神面も健やかに、将来社会に適応するように成長することが大変重要な課題である。
なぜうつが注目されているか。実は成人のうつ病はその発症が児童青年期にあると考えられ、また日本ではここ30年子どもの自殺が年間600人ほどで、子どもの総数が減少しているので自殺率は増えている。子どものうつ病はメタ解析では13歳以下では2・8%、13歳から18歳以下では5・6%、長尾氏の調査では8%である。この調査で有病率が高いのは、親の話だけでなく、子どもの話をも積極的に聴き、質問紙型のチェック表を用いた構造化質問紙法で、うつ症状を丁寧に検討する工夫があるからだ。子どもは「かみ」の前ではより正直であるという。質問紙にはうつ症状にかかわる睡眠、考え事、気持ち・意欲(希死念慮も含む)、行動、食欲、痛みなどの身体症状、日内変動、甘えや退行現象など、詳細に渡り拾い上げ、聞き漏れのないように工夫されている。面接のときは子どもが自分にぴったりとくる言葉、分かりやすい表現を用いることも大切と説く。さらにうつ症状手前の精神状態、基底気分の周期、変動にも気を配り、本人が「どうしていいかわからない、何とか元に戻りたい、カウセリングを受けたい」なら、治療を開始した方がよい。長期間のグラフィング作業も経過を捉えるに大切で、うつ病の悪化、躁状態の周期などの把握に有用である。
最後に、三重県の中学校での取組事例も解説していただき、示唆に富んでいた。
次に、犬尾氏の講演で、日本では受験シーズンと花粉の飛散時期が重なる。アレルギー性鼻炎は、睡眠障害や学習障害をもたらし受験失敗をもたらす要因となる。犬尾氏からはアレルゲン免疫療法の実際的な話があった。昔からされている皮下注射免疫療法(5歳以上が対象)に加え、舌下に抗原を滴下する舌下免疫療法が12歳以上では可能となっている。今回は藤田保健衛生大学病院で犬尾氏がされていた皮下注射免疫療法の話が主であったが、短期入院で急速に増量する方法の提示や、少なくとも3年以上維持するのが大切とのアドバイスもあった。
またアレルギー性結膜炎には、結膜には血流がほとんどなく経口薬ではほとんど効果ないことと、小児では点眼ステロイドを用いると眼圧上昇しやすいことも教えていただき、免疫療法の最もよい適応疾患であるといえる。
両講演ともに興味深い内容で、後の懇親会でも盛んに議論が続いていた。
(中京西部・松尾 敏)