地域の介護充実は喫緊の課題
提供体制守るのは我々保険医
来年は、2年ごとに改定される診療報酬改定と、3年ごとの介護保険の保険料見直しと報酬改定が同時に行われる年である。
5月26日には、改正介護保険法が国会で成立し、「現役並み所得」の高齢者が介護サービスを受ける際の利用料負担割合の3割化が決まった。また、40歳から64歳の現役世代の介護保険料が見直され、所得によっては下がる人もいるが、今よりさらに上がる人々もいて、国費が年約1600億円抑えられるという。
今回は、対象を一定所得層以上に限ったために「負担できる人により多く負担してもらう『応能負担』への転換は是認する」(民進党)として、負担増批判は抑えられた。背景には、貧困格差が広がる社会で、相対的に所得があるとされた人々にはもっと払ってもらいたいという横並びの市民感覚がある。そこを利用し、公的責任を自己責任に置き換え、国費を縮小するという安倍政治の基本路線が着々と進められている。
介護保険の利用料は1割とされていた。それが2015年に一部の2割負担が導入され、その検証もされないうちに3割負担が実施されるとは過酷だ。
全国平均5000円を超す保険料を40歳から払い続け、いざ利用する段になって、自己負担料が高すぎて使えないのでは、何のための保険なのだろう。
現在の日本の経済状況はかつてのような右肩上がりを望むべくもなく、国民が、長引く不況・低成長の時代をどう生きるかと模索しているような時に、先行きの希望を奪い不安を増長するような社会保障の後退ばかり押し進めるのは間違っている。高齢者・障害者が安心して生きられる社会の姿を示すことが政治の役割ではないか。
来年の改定で厳しい予測ばかりが先行しているが、一方的に財源不足で押し切られる議論に屈することなく、国民の生命と健康に責任を持つ専門家の立場から、日本の医療提供体制をどう守っていくのか、議論を重ね、具体的な提案を示し運動を提起していきたい。
医療と介護の連携がことあるごとに提唱されるが、医療提供側の我々にとっても地域における介護体制の充実は喫緊の課題である。医療の効果を充分に発揮するためには、やさしく穏やかで細やかな介護の手があってこそ可能である。地域の医療・福祉・介護の連携をさらに進め、京都府・市へも働きかけを強めたい。
国の進めるさまざまな制度改革に対して、医療現場からの率直な意見をとりまとめ各機関に届けて参画していきたい。