協会は文化講座「和食を通して伝えたいこと」を3月12日に、左京区にある山ばな平八茶屋で開催。参加者は36人となった。以下、参加記を掲載する。
「和食を通して伝えたいこと」を聞いて
田林徳昭(宇治久世)
川端通が北山通を超えたあたり、創業四百三十年の山ばな平八茶屋があります。壬生狂言に演目があり、漱石の虞美人草に登場し、魯山人が通ったと言います。保険医協会の文化講座があり、初めてうかがうことができました。「不老門」という門がありましたので、用もないのにくぐらせていただいて、大原女姿の仲居さんの笑いを取っておきました。
まず宴会場で講演を拝聴することになりました。窓外の高野川には桜の枝が垂れかかり、開花する頃がこの店のトップシーズンと聞きます。二十一代若主人の園部晋吾氏が細面に調理師姿で登場しました。パワーポイントによる説明が始まります。
氏の和食の定義ですが、一、油脂ではなくて出汁で美味しくし、二、酢、醤油、味噌、酒、ミリン等の日本独自の発酵調味料で味付けをするものだそうです。三、季節感があり、四、碗、箸、畳などの日本文化に結びつき、五、御飯を中心とした食事とのことです。このため、塩分濃度が高く、油脂分が低くなります(無形文化遺産の和食はカレーライスまで含みます)。
伝えたいことは、食材などから得る情報を取捨選択する「生きる力」、いただきます、ご馳走様の「感謝の気持ち」、食べる人への思いなど「他人への配慮・気遣い」だそうです。食事への感謝は、日本人の場合は食材への感謝で、欧米人は神への感謝であるとわかりやすく解説していただきました。
さて、講演も終わって宴会、麦飯とろろ膳というお料理です。だし巻き、海老、八幡巻、焼き魚等が盛られた器が配られて、ささやかな乾杯です。炊き合わせ、吸い物が続きますが、氏の講演とは裏腹に、薄い塩味で、どこかで食べたような懐かしさでした。メインのとろろは出汁が絶妙に芋と絡まり、麦飯の味を引き立ててくれました。思いの外お腹がいっぱいになりました。
玄関でのお見送りは、若主人お一人でした。お仕事に対するストイックな姿勢を拝見した気がしました。