ケルシー教授や鳩山元首相が警鐘 RCEPにTPP延命の目論見  PDF

TPPは米国離脱後、残りの11カ国によるチリでの閣僚会合(3月15日)でも進展はみられていない。今後、米国が唱える日米二国間FTAに懸念が強まるが、日本がすでに交渉中の日欧EPA(経済連携協定)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、TiSA(新サービス貿易協定)といった自由貿易協定の行方も注意が必要となろう。

そのひとつRCEP会合が2月27日から3月3日まで神戸市で開かれた。参加国はASEAN10カ国と中国、インド、韓国、ニュージーランド、オーストラリア、日本の16カ国。交渉は2013年から始まっているが、米国のTPP離脱後初の会合として注目された。
「RCEPに対する国際市民会議」が主催して兵庫県保険医協会で2月26日、関連企画が開かれた。現状と問題について解説したのは、ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授。元首相の鳩山友紀夫氏(由紀夫から改名)も特別講演を行った。
ケルシー氏は、RCEPのようなメガ自由貿易協定は、広い領域にわたり各国の将来の政策を拘束するもので、基本的には新自由主義モデルをもとにしていること。TPPと同様に秘密交渉であること。TPP参加国(16カ国中7カ国)でもある日本など多くの国が、TPPにかけた政治的コストを再活用させるため、RCEPにさらに悪いかたちでその内容を持ち込もうとしていること、などを指摘。日本や韓国から医薬品特許の保護強化やTPPで問題となったISD(投資家対国家の紛争解決)条項が提案されていることなどを例示した。特に医薬品の問題は、発展途上国・後発途上国でのジェネリック医薬品製造を阻害することが懸念される。RCEPは域内の経済的、文化的な違いが大きいため、同じ市場モデルを志向したTPPよりも複雑で難しいとされる。今後について、交渉過程へのアクセスを企業だけでなく市民にもオープンにさせることや、国や地域を超えて情報を共有することなど課題を述べた。
鳩山氏は、東アジア共同体として不戦につながる議論の場をつくることは重要だが、新自由主義はもっと批判されるべきと行き過ぎた自由貿易を批判。先進国のエゴではなく、途上国を発展させる視点を大事にしつつ、持論の「友愛思想」を導入すべきと発言した。

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