マダガスカル 5 関 浩 (宇治久世)  PDF

暁のバオバブ ムルンダバ市内

朝の4時起き、暁のバオバブ見学に。待つ間に日本人の40代後半の夫婦と会話。ガイドなし、移動も現地の人と同じ乗り合いバスの安いタクシー・ブルースを利用し、安い宿屋、同じ食事、狙われないように服も荷物も質素にしていますと言う。夫婦で旅行のために働き、ある程度たまったらまた世界に出かけるのだと、なんとも自由な2人。
木々の間から顔出したオレンジ色の太陽は、瞬く間に昼間の明るさを取り戻した。ホテルに帰るとムルンダバ―アンタナナリブの国内線出発時間が変更になったと聞かされた。日本出発前にも当初12:25ムルンダバ発が数十分遅れになると聞いていたが、さらに突然17:00発に変更になったという。マダガスカルでは、国内線の変更、中止もよくあると聞かされていたものの、アンタナナリブ着が18:00、それから4時間かけて本日宿泊のアンダシベまで行くのか? うんざりした。予定外の待ち時間が発生したのでイソリアと歩いて浜辺、市街地に出かけることにした。狭い浜辺では小型の漁船が漁を済ませて舫っているが、発動機もない舟が多く、これではあまり沖には出られないだろう。人口約3万8千人のムルンダバはアフリカより移住、あるいは奴隷として連れてこられた住民が主で、顔つきはアフリカのどこかの町という感覚である。肌は褐色というより黒一色であるが、白く化粧した女性をよく見る。綺麗に化粧するというのではなく、顔に塗り付けるだけ、これでは黒白がよけい際立つではないか。顔料はアボガドと現地の果物で作られ日焼け止めが目的だそうだ。しかし、これ以上黒くなる心配があるの?と思うが、当人にしてみれば、真剣だ。
歩くうち、のどが渇いたので道端のココナツを買うことにした。
敷物の上に積み上げられたヤシの実を幅広の包丁でザクッと切り取りハイよとストローを渡される。1個1000アリアリ35円程度。まてよ、ストロー束はむき出し、水道、ごみ袋などない、まさか洗わず共用するのか? しかし、意を決して飲む、冷たくはないがほんのり甘く、のどの渇きは潤してくれた。町なかは大勢の人々、自転車、車で混雑し歩くのも困難、路地から入る市場は人ひとりやっと通れる狭さ、人いきれと掛け声、香辛料、穀物、川魚、沢カニ、川エビ、海の魚、肉、さまざまなにおい、体臭が鼻をつく。帰りは人力車でホテルへ。ペダルをこぐ草履履きの車夫の荒い息使い、浮き出す汗染み、男2人乗せて大変だ。
昼遅く、10㎞離れたムルンダバ空港へ。荷物検査の厳重さには驚かされた。マダガスカル出国時には賄賂ほしさに税関官吏が執拗に荷物を調べ、さらに身体検査まで行うとなにかの本で見たが、それではないようだ。無害そうな女性にもスーツケースを開けさせ、中身を持ち上げ、金属探知機を差し込む。すべて見られる。女性は誰もが「いやだわ!」と顔をしかめる。ところがである。スーツケース検査が終わり、すぐに隣接する出発待合室に入るのだと思っていたが、そうでなく、ロビーの一角に行けという。座席はたかだか8椅子、テープを一条だけ張るが、隙間はどこでもある。外部へあるいは外部からも出入りは自由。とても隔離は無理なのである。一段落して待合室に誘導されるが金属探知機はなく、簡単な手荷物チェックだけ、これでは身体に巻き付けてなんでも持ち込めるよ。国内線は双発のプロペラ機で快適な55分間、首都アンタナナリブに到着した。しかし、これからが大変。

バオバブと旭日
愛するバオバブ
街角のココナツ売り 日焼け止めの顔料を塗っている

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