恒例となった審査会だよりとして、国保連合会診療報酬審査委員会副会長である坂部秀文氏がレセプト審査の概要を解説されました。2年に1回協会が実施している「審査に関するアンケート調査結果」について言及されました。
審査委員会に期待することで最も多かったのが、「患者の個別性を重視し、医師の裁量を尊重した審査」でした。
審査委員として腐心していることは、審査の基本は、「医科点数表の解釈(社会保険研究所)」である。再審査については、保険者からの質問と医療機関からの返戻に対する請求とがあるが、前者については認めた根拠について医療機関側の立場に立って回答していること、後者については病名漏れは原則査定であること、等を解説されました。
つづいて、特別講演では「食道癌に対する外科治療―拡大視効果を意識した鏡視下手術から得られた微細解剖に沿った食道癌手術―」と題して、大阪市立大学大学院医学研究科消化器外科学講師の李栄柱氏が最新の鏡視下食道癌手術について講演されました。
切除可能食道癌の治療は手術が基本であるが、開胸手術か鏡視下手術かの選択に確たる基準はない。わが国のNCD(National Clinical Database)の結果では術後合併症や再手術率が鏡視下手術で若干高値であるものの、これはRCT(Randomized con-trol Trial)の結果ではなく、今後の検討が待たれる。
しかし、鏡視下手術が行われるようになって、これまで肉眼では確認のできなかった縦隔の微細な解剖が明らかになり、術後の合併症を低減させることが可能となっている。
たとえば、右上縦隔では、右迷走神経に到達するためには右縦隔胸膜を切開した後、頚部交感神経からの細かい分枝や脂肪組織で構成されるもう1層を切開しなければならない。右頚部交感神経の心臓枝は原則、右反回神経の内側を走行するので温存が可能である。また、両側とも交感神経心臓枝と反回神経との間に交通が見られることはまれではない。
胸部交感神経幹からの分枝は、右側では右気管支動脈に伴走し、その左側で帯状になって右肺門へ走行する。左胸部交感神経幹からの分枝も、大動脈弓下で帯状になって左肺門へ走行していることが、右胸腔から確認できる。郭清時に左胸部交感神経幹からの分枝は切離する必要はないが、右胸腔アプローチでは右側を切離することで、容易に術野展開ができる、等々でした。
(上京東部・谷口 弘毅)
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