協会は11月26日、医療安全講習会「どこまで責任を持てますか?―医療機関での転倒・転落―」を開催。講師は、損害保険会社から招いた上原禎史氏(損害保険ジャパン株式会社医師・専門賠償責任保険金サービス課副長)と北本渉氏(SOMPOリスクマネジメント株式会社医療・介護コンサルティング部サービスグループ上級コンサルタント)。
本来は昨年度に開催を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。感染防止のため一般会員の参加受付は行わず、本講習会の様子を録画したものを協会ホームページに掲載している。ぜひご覧いただき、医療安全研修等に活用いただきたい。
講習会ではまず上原氏が、医療機関での転倒・転落に関する具体的な判例を挙げ、医療機関が注意すべきポイントとして、①ローレーターや柵などの工作物設置保存の安全性を確保すること②転倒・転落の危険が考えられる(予見可能な)場合には、防止するための(回避可能な)手段を講じること③それらをカルテなどにきちんと記載しておくこと―などを解説。これらの点をしっかりと押さえておくことで、仮に裁判になった際でも医療機関側が無責を主張する根拠となるので、できる限り対応すべきとした。
次に北本氏は、全国の医療機関で発生した転倒・転落事故の件数や判例をもとに転倒・転落事故の実態について報告した上で、事故前と事故後それぞれのリスクマネジメントについて解説した。事故前のリスクマネジメントでは、患者の転倒・転落歴を把握すること、ベッドからの転落による頭部外傷を予防するために保護帽や衝撃吸収マットを活用すること、さらに院内でカンファレンスや研修を開催することが重要であるとした。また、入院時や患者の状態変化時には転倒・転落アセスメント・スコアシートを活用し、患者、患者家族への説明やスタッフ間の情報共有に用いることが望ましいと述べた。特に患者・患者家族への説明では、患者によって転倒・転落のリスクが高いことを説明し医療機関だからリスクゼロではないという理解を促すことで、予防だけでなく事故後の紛争防止にも役立つことがあると解説した。事故後のリスクマネジメントとしては、頭部打撲の場合は状況に応じて頭部CT撮影を考慮すること、異常所見があれば脳神経外科医による手術ができる体制あるいは高次医療機関へ搬送できる体制を構築しておくことが重要であると説明した。
最後に北本氏は、人口の超高齢化により入院患者における転倒・転落事故は増加しており対策が必要であるが、完全に転倒・転落を防ぐ方法はないので、患者個々に沿った対策を検討し組織的・体系的な取り組みが重要だと締めくくった。
協会ホームページ:https://healthnet.jp
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