厚労省 将来の「適正配置」睨み 外来医療機能分化の議論進む  PDF

 厚生労働省は、外来医療に地域医療構想と同様の発想を持ち込み、外来医療の機能分化と将来の「適正配置」を目指す動きを活発化させている。
 外来医療を「かかりつけ医」と「医療資源を重点的に活用する外来」に分別し、地域における必要数を外来医療計画に定めさせる新たな方策が示されたのは2020年2月に開催された医療計画の見直しに関する検討会だった (本紙3073号既報)。新型コロナウイルス感染症が拡大し、表立った動きは停止しているかのようだった。しかし、同検討会は10月に再開、11月19日の会合には「論点の整理(案)」が示されるに至った。
 整理(案)は「新型コロナウイルス感染症を最重要の課題」としつつ、「中長期的には、人口減少や高齢化等により」「担い手の減少と需要の質・量の変化という課題に直面」しており、「地域で限られた医療資源をより効果的・効率的に活用し」「質の高い外来医療の提供体制を確保・調整していくことが課題」とのロジックで外来機能分化をコロナ以前と変わりなく推進することを表明。むしろコロナ禍を梃子にさらに進めようとする姿勢が見て取れる。

新たな提案含め
21年医療法改定で導入予定

 その上で提案されたのは大きく次の四つである。まず、医療資源を重点的に活用する外来を担う医療機関の明確化だ。求められる基本的な三つの機能が示された。①医療資源を重点的に活用する入院前後の外来②高額の医療機器・設備を使用する外来③特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)―である。
 次に、外来医療機能の報告制度の創設で、先述した機能に関する報告を各医療機関が都道府県に対して行う。この際、国は各医療機関に対して、当該医療機関に対しレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、実施状況の報告を行う。なお報告の義務化については、まずは一般病床または療養病床を有する医療機関に課され、無床診療所は任意での報告とされた。
 そして、報告を活用した都道府県による外来医療計画のヴァージョンアップ。現行の外来医療計画の「情報可視化」等に加え、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)の医療機能明確化・連携を位置付けたものにする。
 最後に、その実現に向けた「協議の場」の設置で、協議の場は現行の地域医療構想における調整会議を活用できることとする。
 さらに現在、外来医師偏在指標により外来医師多数区域とされた区域における開業ハードルが設けられており、地域で不足する医療機能を担うことが開業の条件に付されているが、「不足する医療機能」の抽出にも外来機能報告制度(仮称)データが用いられることになる。以上の新たな仕組みは2021年の国会における医療法改定での導入が目論まれている。国の方針貫徹に有利なデータを提供し、その範囲内に都道府県を縛りつける。形式上は自治体と地域の医療機関の責任において事を進めさせる手法が、今回も採用されるもようだ。

新設される外来機能報告制度
無床診は「まずは」除外見通し

 新たに設けられる外来機能報告制度の義務化対象から無床診療所は外される見通しとなった。だが、検討会の論点の整理(案)の文中にも「まずは」という文言にあるように、いずれ義務化は必至であろう。そもそも無床診療所は一括りにできない。さまざまな標榜科があり、開業医一人ひとりの目指すべき医療があり、それに伴って診療内容も保有する医療機器も極めて個別性が高い。国が目指すのはフリーアクセス制限と自由開業規制、そして究極には医師の在り方、医療の在り方の統制である。そのためにかかりつけ医を計画配置するとともに、かかりつけ医を通じてしか専門科や入院にアクセスできない仕組みづくりを進めようとしているものと考えられる。そうである以上、無床診療所の機能分化、類型化(つまりかかりつけ医と非かかりつけ医=医療資源を重点的に活用する外来)こそが、国にとって本丸であるはずだ。

大病院受診時定額負担の拡大方針
外来機能分化と連動

 一方、医療資源を重点的に活用する外来を、大病院受診時の定額負担拡大に利用する動きがある。
 11月19日、社会保障審議会医療保険部会で厚生労働省は、紹介状なしで大病院を受診した患者からの定額負担徴収を義務づける対象病院を拡大し、200床以上で「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う病院」を加える方針を示した(図1)。
 加えて見過ごせないのは定額負担をさらに上乗せすること、その際、「公的医療保険の負担軽減」のため、紹介状なしで大病院を受診する患者にかかる初・再診料を保険給付から除外(例示では2000円)し、その分の補填を患者からの直接徴収で補わせるという手法である(図2)。これはフリーアクセスによる受診について療養の給付を縮小する動きであり、奇襲とさえいえるものだ。
 以上のように、コロナ禍にもかかわらず国サイドでは外来医療の在り方の議論をめぐる動きが騒がしい。協会はこれらを皆保険体制を支えるフリーアクセス・自由開業・療養の給付に対する一体的な攻撃と捉え、必要な運動を会員各位に提起し、取り組みを強める。

図1 定額負担の対象病院拡大について(案)
図2 定額負担の増額と公的医療保険の負担軽減について(案)

第134回社会保障審議会医療保険部会(11月19日)資料より作成

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