京都保険医新聞では、「私がすすめる」ことをテーマとする会員からの原稿により、紙面が大いに活性化されている。もちろん、特に勧める意図がなくとも、関心・興味が深いテーマでもよい。いつぞやは、優良映画を勧める「妻と二人の映画鑑賞」という、映画を鑑賞したのは本当に妻と二人で? と疑ってみたくなるシリーズもあった。また、最近も「私のすすめるBOOK」として、必ず一読していろいろ考え直すのがよいとの書籍の紹介文もあった。現在、編集委員会で考察中の紙上テーマとしては、新型コロナにめげずに「京都の温泉地めぐり」「洛都のうまい地酒・地ビールにあう美味い佃煮・漬物・精進料理」などもあろうが、「推薦本」もよかろうと「私のすすめるBOOK」に寄稿してみたくなった。なお、改訂がない限り、発行日は初版発行日を記載する。
最近、『100日後に死ぬワニ』なるマンガ本が目について、何年か後の我が身ならずやと題名に引かれて買ってみた。その時偶然何が起こってワニが他界するのか、しばらく読んでみても神さえ知らぬ不明のままである。12月11日の初頁は、若い緑のワニ君はリュック姿で、誰しも明日に死ぬかもしれずとも、一生懸命今日を生きる元気な歩みである。知らぬ病で緩和病棟の入院3カ月を越せずに他界となる様子でもない。
ならば、100日後とは限るまい。7月31日厚労省発表の簡易生命表では、日本人の平均寿命は男性81・41歳、女性87・45歳で、去る年12月の誕生日に古希から丸1年を経過した自分ならその差はもはや10年もない(余命はもう少しあろうが)。たとえば、妻が里帰りして一緒に訪問した時、今は亡き舅どのが「わしは今、人生の完成を控えて大事な時期に入った。分かるか?」と妻に仰せであったのを思い出す。自分も今年は覚悟を決めて、残った大きい仕事を早く片づけ、真面目に終活を開始して、悟りの道へと勤しみたいと考えている。
本書では、12月14日、赤信号で横断歩道を渡るひよこを交通事故の危険から救い、「危ない!」「無事でよかった」「気を付けないと死んじゃうよ!」と、事故防止への学びとする。3月20日の100日目、別のひよこをまた助け、熱中症や新型コロナ感染症ではないが、ワニ君の姿も遂に消え失せる。交通安全をも促進し、若いままでもすでに高齢化していても、永遠に生きられる如くに学び続ける(M・ガンジー)、健やかなる長生きへとの推奨譚である。ご購入・ご一読をお勧めする。(宇治久世・宇田 憲司)
『100日後に死ぬワニ』
小学館サービス
発行日 2020年4月8日
本体価格 1,000円
著者 きくちゆうき