厚生労働省は9月4日、季節性インフルエンザ流行期を念頭に10月中旬までを目途として発熱患者を受け入れる体制整備を都道府県知事等に依頼した。その流れは、①発熱等の症状を生じた患者が、まずはかかりつけ医等の地域の身近な医療機関に電話等で相談②相談を受けた医療機関は自院も含め診療可能な医療機関を紹介する③既存の帰国者・接触者外来等も含め、発熱者等の診療または検査を行う医療機関を新たに「診療・検査医療機関(仮称)」として指定し、速やかに増やす④帰国者・接触者相談センターは帰国者・接触者外来を案内する従前の役割を解消。住民が相談する医療機関に困った場合の相談先として「受診・相談センター(仮称)」として体制を維持・確保―というもの(本紙3082号既報)。10月2日には厚労省から、鼻腔ぬぐい液をCOVID-19抗原定性検査の検体とすることが可能となった旨の通知が発出された。
こうした国の方針を受け、京都府では京都府医師会等とも相談し体制整備に向けた方針が検討されている。
10月15日時点で出されている資料では、インフルエンザの検査とCOVID-19の検査を整理。COVID-19抗原定性検査キットで採取した鼻腔ぬぐい液の処理液をインフルエンザ抗原迅速検査で使用できること(インフルエンザ検査をした検体処理液はCOVID-19抗原定性検査には使用できない)や、COVID-19とインフルエンザを一つのプレートで検査できるキットが10月中に販売される予定であること。「診療・検査医療機関(仮称)」の施設要件と機能要件、報告要件(表1)などが情報提供された。京都府は「診療・検査医療機関(仮称)」を原則公表しないとしたうえで、地域の医療機関で情報共有することを求めているが、京都府としての最終的な方針は協議中であり、10月中に決まる予定だ。
こうした体制整備に向け、国による「インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業」として体制確保に要する経費への支援補助金が設置されている。「体制確保料」として発熱外来専用診察室一つにつき、1日(7時間)当たりで最大「20人×1万3447円=26万8940円」が補助ベースとなる。ただし、実際に診療した人数分は診療報酬から支払われるため、補助金からは減額されて交付される(表2)。対象医療機関は都道府県より「診療・検査指定医療機関(仮称)」の指定を受けていること。また指定医療機関には国が個人防護具の支給を実施するとしている。
表1 かかりつけ医における診療・検査医療機関(仮称)の指定について
施設要件
・発熱患者等の受診の際の動線が分けられていること
・適切な感染対策が講じられていること
・必要な検査体制が確保されていること
・都道府県と行政検査の委託契約(集合契約・府医へ申し込みを行う)を締結していること
・自院の患者および自院に相談のあった患者である発熱患者等に対して、発熱等の症状が生じた場合には、電話で相談した上で受診する旨を院内に掲示すること
機能要件
・自院の患者等を受け入れる場合は、院内掲示を行う等により、あらかじめ自院での受入対象患者や対応時間等を示す(たとえば、「発熱などの場合は事前にお電話下さい」など)こと
・都道府県等に対して、あらかじめ自院での受入対象患者や対応時間等を示した上で、その範囲で、患者から相談があった場合、原則速やかに患者の診療・検査を受け入れること
・検査については、鼻腔ぬぐい液検体による抗原簡易キット(抗原定性検査)またはPCR検査、唾液検体によるPCR検査により行うこと
・自院を受診した患者の検査結果が陽性であった場合には、速やかに保健所に連絡し、患者の状態を伝える等、患者の療養先の検討に協力すること
報告要件
・日々の受診者数や検査数を新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)により入力すること
・新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)にかかりつけ医における必要な情報の入力を行うこと
表2 インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業
補助金の算定方法
補助金の交付額(1日当たり)=(①-②)×13,447円
①発熱患者等を受け入れる体制を確保した時間に応じて、専用の診察室で受け入れることが想定される発熱患者等の患者数(以下「基準患者数」)
※人数には上限があり、1日7時間あたり20人(表3)。1日4時間、専用の診療室を確保した場合は、
4時間×20人/7=11.428…人が上限
②実際に診療室で受診した発熱患者等の受診患者数
補助金の交付申請
交付申請額(例)
(①-③)×13,447円×稼働日数
※曜日ごとに診察室を確保する時間が異なる場合は曜日ごとに計算
診察室を確保した時間に応じて算定される①基準患者数から、③21年3月末までの各稼働日における受診者数の見込み(想定受診者数)を差し引いた人数に、13,447円を乗じる。さらに「診療・検査医療機関(仮称)」の指定を受けた日から21年3月末までの稼働日数を乗じた額を、補助金の交付申請額として申請。いわゆる概算払いを行うことになる
体制確保支援補助金申請書等はこちらから
https://www.mhlw.go.jp/content/000681322.xlsx
提出期限:10月30日(金)とされているが、提出期限後も随時受け付ける。都道府県から指定を受けた後、できる限り速やかな提出
提出方法:郵送
宛先:〒100-8779 銀座郵便局留
「100-8916厚生労働省発熱外来診療体制確保支援事業担当」宛
◆補助金の支払いは2回に分けて行うことを予定しており、第1回の交付は、3~4カ月分として、申請額の5割分(10万円単位に四捨五入)を基本として支払う。今回の補助金の請求書には、交付申請額の5割に相当する金額を記載する
問い合わせ先
厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター
電話番号:0120-336-933
たとえば週4日、4時間の体制を確保した場合…
1日の受入上限人数は11.4人
補助ベース:11.4×13,447円=153,295.8円
1日の受診患者数が5人だった場合
11.4人-5人=6.4人×13,447円=86,060円
※実際に診察した5人分は一般外来の収入
上記条件で1カ月に15日を確保し、20年11月から21年3月まで体制を維持した場合
86,060円×15日×5カ月=6,454,500円
※1000円未満の端数切り捨て
●通常の診療日・診療時間以外に発熱外来時間を設定した場合も、診療日や診療時間の変更届出の必要はない
●「診療・検査医療機関(仮称)」が自院のかかりつけ患者及び自院に相談のあった患者である発熱患者等のみを受け入れる場合は、基準患者数は1日2時間5人が上限
●最終的には21年3月までの受診者数等の実績を報告し、実績を踏まえて、国庫補助額の精算を行うこととなる
●基準患者数と受診者数の差引は1日ごと。上記条件の場合、1日の受診患者数が11.4人を上回った場合は、補助額は0円
●上記条件で1日の受診患者数が0人だった場合は、1日補助ベースの約15万円。1カ月1人も受診者がなかった場合は(20年9月、10月は除く)、補助額が2分の1に減額される
●午前を一般外来、午後4時間を発熱外来としたものの発熱患者0人で、発熱外来の間にやむを得ず一般外来の患者が2人受診された場合、11.4人から2人を差し引いた9.4人分の補助となる
●医師2人の診療所で1人が診察室Aで発熱外来のみ。もう1人が診察室Bで一般外来のみを診察した場合、それぞれ独立して人数をカウントする。診察室Aで発熱患者が0人だった場合は、診察室Bの患者数にかかわらず、診察室Aに対して発熱外来設置時間に対しての上限補助額が支給される
表3
発熱外来診療時間
基準患者数(その時間ごとの補助上限の患者数)
7時間 20.0人
6時間 17.1人
5時間 14.3人
4時間 11.4人
3時間 8.6人
2時間 5.7人
1時間 2.9人
患者受入実績表見本(記入例:土曜日のみ4時間受診、あとは7時間受診の場合)
10月 1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 小計
(木) (金) (土) (日) (月) (火) (水) (木) (金) (土) (日) (月) (火) (水) (木) (金)
区分
開設時間
7.0 7.0 4.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 4.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 92.0
基準患者数
20.0 20.0 11.4 0.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 11.4 0.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 262.9
受入患者数
12.0 10.0 24.0 10.0 4.0 12.0 12.0 10.0 3.0 6.0 8.0 5.0 5.0 25.0 146.0
体制確保数
8.0 10.0 0.0 0.0 10.0 16.0 8.0 8.0 10.0 8.4 0.0 14.0 12.0 15.0 15.0 0.0 134.4
10月 17日 18日 19日 20日 21日 22日 23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 31日 小計 合計
(土) (日) (月) (火) (水) (木) (金) (土) (日) (月) (火) (水) (木) (金) (土)
区分
開設時間
4.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 4.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 4.0 82.0 174.0
基準患者数
11.4 0.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 11.4 0.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 11.4 234.3 497.1
受入患者数
6.0 12.0 13.0 14.0 8.0 7.0 15.0 21.0 16.0 12.0 12.0 8.0 144.0 290.0
体制確保数
5.4 0.0 8.0 20.0 7.0 6.0 12.0 4.4 0.0 5.0 0.0 4.0 8.0 8.0 3.4 91.3 225.7
「20年度インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業のご案内(10月9日厚生労働省健康局感染症課)」「季節性インフルエンザ、COVID-19流行を踏まえた発熱患者受け入れ体制(診療・検査医療機関)について(10月13日公益社団法人日本医師会)」「京都医報付録・新型コロナウイルス感染症関連情報第14報(10月15日一般社団法人京都府医師会)」を参照