新型コロナの最前線学ぶ 役員・事務局学習会を開催  PDF

 協会は、役員・事務局を対象に9月6日、学習会を開催。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、一気に普及したウェブ会議システムである Zoom の利用方法を講習した後、新型コロナを踏まえた今後の医療・社会保障制度と感染症対策の在り方を議論。続いて、京都府立医科大学附属病院感染制御・検査医学教室准教授(病院教授)の藤田直久氏を講師に「新型コロナウイルス感染症 Coronavirus disease 2019 わかっていること わかってほしいこと」と題した講演会を開催した。
 藤田氏は、まずSARSを振り返り、医療従事者の感染が大変多かったことから、感染対策の見直しが行われ、今につながっていることを解説。ランセットに掲載された感染予防の実験データを紹介しつつ、マスク、手袋、ガウンなどの装着や手洗いが必須であること。何より脱ぎ方が大変重要であると述べた。
 SARSと新型コロナの大きな違いは二次感染が発生する時期で、SARSは発症後から二次感染が発生し、10日目あたりでウイルス量がピークを迎える。一方、新型コロナは発症前から発症後4日目あたりでピークとなる。初発患者の発症前に感染している二次感染者は全体の44%にのぼると言われているとし、ここに疫学調査の難しさがあると述べた。
 また、いわゆる風邪のウイルスである一般的なコロナにおいて、最近の報告では抗体がなくても実は細胞性免疫のT細胞が記憶しているというようなことがあり、特殊型となる新型コロナの重症化とも絡んでいるのではないかとする報告があると紹介した。
 診断はPCR検査が現状のゴールデンスタンダードだが、熟練した遺伝子抽出技術が必要。現在は簡易法が出されているが、感度の問題があるとした。一番良いのは検体を放り込めば全自動で結果が出てくる機械だが、いかんせん高額だと課題を述べた。
 治療では、唯一保険適用されているのがレムデシビルで、新型コロナ患者の回復期間を31%早める、あるいは死亡率を改善させたとの報告がある。一方で、肝障害・腎障害・皮膚障害などの副作用があり、注意して使用する必要があると述べた。また、デキサメサゾンで、強くはないがそれなりの免疫抑制をかけて抗炎症効果をみるとした。中等症以上で入院する患者の基礎疾患は高血圧、糖尿病が圧倒的に多く、次いで肥満で、臨床経過については1週間ほどで治癒する人が約80%。一方で、7日目ぐらいから症状が悪化する患者が約20%。このうち、死亡者は約10%だとした。
 最後に藤田氏は、「新型コロナへの対応はチームで立ち向かわなければならない。潤沢な医療資源、人材が必要だということだ。たとえ人工呼吸器が80台あっても、動かせる看護師と医師がいなければ意味がない」と話し、1920年当時のスペイン風邪のときに「近寄るな 鼻・口を覆え うがいせよ」という広告が出されていた例をあげ、「現在の新型コロナと同じことを言っている。もう一度、基本に立ち返ることが必要だろう」とした。

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