昨年、中国武漢に発生した新型コロナウイルス感染症は瞬く間に全世界に拡散し、今世界はパンデミックの悪夢の只中にある。世界の至るところで、医療はもちろん、政治、経済、人種の問題などがパンデミックの恐怖と不安により顕在化し、社会混乱に拍車をかけている。
我が国の医療分野においても、新型コロナウイルス感染症対策の最前線に立つ保健所のオーバーワーク、OECD加盟国の中では特に少ないPCR検査数、マスクを始め新型コロナウイルス感染症に対応する医療者の安全防御材料(PPE)の不足、感染ピーク時のICUや感染病床不足による医療崩壊の危機など新型コロナウイルス感染症は日本の公衆衛生、医療の問題点を浮き彫りにした。
これは1990年代以降、新自由主義改革の名の下に行われてきた医療・社会保障制度分野での公的保障のミニマム化によりもたらされたものであり、保健所数は1994年の847箇所から2020年の469箇所と大幅にリストラされた。結核の蔓延を機に組織された保健所が新たな感染症を前に力が削がれていたのである。また、新型コロナウイルス感染症は経営的にも医療機関を直撃し、大幅な減収をきたした。医療機関の存続は日本の社会保障の根幹であり、国による強力な財政的支援を求める。
新型コロナウイルス感染症の第二波、第三波が予想されるなか、PCRを主とした検査体制の強化と医療PPEの充足を迅速に進めることが喫緊の課題である。21世紀はウイルスとの戦いの世紀とも言われ、地球環境の悪化と経済のグローバル化は新型コロナウイルス感染症発生拡大の一因である。今後も新型コロナウイルス感染症以外の新興感染症の出現が予想されており、一旦パンデミックとなれば社会経済活動全般が停滞し、危機にさらされる。今こそ医療費抑制を目的とした病床数・医師数抑制政策は即刻、拡充強化の方向へ転換し、世界に誇る日本の皆保険制度を強化し、パンデミックにも対応できる医療体制を構築する時であり、以下を決議する。
一、全ての保険医療機関に対し、新型コロナウイルス感染症拡大によって生じた減収分を全額補填すると共に、院内感染防止のための医療資機材の支給及び対策のための財政措置を講ずること。
一、新型コロナ禍の中、改めてその有効性が認識された国民皆保険制度を堅持、発展させ、従来の病床数・医師数抑制政策を転換し、新興感染症にも対応できる医療体制を構築すること。
一、初診・再診料などの基本診療料の引き上げをはじめ安心・安全な医療を提供できるような診療報酬体系とし、医療費抑制策を抜本的に見直しすること。
一、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を梃子にした憲法改正を行わないこと。
一、原発の再稼働を認めず、また現在稼働中の原発は即刻停止し、再生可能エネルギーの導入を促進すること。
2020年8月2日
京都府保険医協会
第73回定期総会
(第199回定時代議員会合併)
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