社会保険労務士 桂 好志郎
試用期間中の雇用管理のあり方
採用した職員の適性、技能、勤務態度、協調性等をみて、本採用にするかどうかを決定する期間として、試用期間を設ける医院が多くありますが、試用期間は必ず設けなければならないものでなく、医院の自由裁量となっています。
試用期間の法的性格
この期間の法的性格については諸説があり、これについての、最高裁判例(三菱樹脂事件―最大判昭48・12・12)は解約権留保付の労働契約の成立としています。
試用期間中は解雇権が本採用より広範に留保されているものとされていますが、同時に客観的に合理的な理由が必要とされています。
試用期間中の解雇について
試用期間中の解雇については、最初の14日以内(暦日をいい、実労働日数ではない)であれば、労基法第20条で定められている解雇予告手続きをとることなく即時に解雇できますが、14日以内であれば、何の理由もなく使用者の都合で自由に解雇できるということを意味するものでなく、正当な理由が必要です。もちろん、試用期間中の職員が「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」の解雇は、労基法の定める解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いが必要です。試用期間満了による解雇の場合も同じです。
試用期間を1年間とすることができるか
法的な規定はありませんが、2カ月~6カ月程度が一般的です。試用期間中は身分が不安定であり、長期の試用期間は公序良俗に反し無効との判例もあります。(ブラザー工業事件―名古屋地判昭59・3・23)
試用期間を延長したいが
業務の適性に疑問、不安が残るため試用期間を延長したいケースがあります。そのためには、その旨の規定を定めておいて下さい。
また解雇の理由については、具体的に、正確に、想定できる事項を網羅し、よく説明しておくようにして下さい。
漠然と過ごすのでなく適切な援助を
採用した職員の適性、技能、勤務態度、協調性等をみて、本採用にするかどうかを決定する期間です。ここで大切なことは、業務適格性を判断するためにも、この期間中に、到達してほしい業務水準、勤務態度等について、目標を明確に提示し援助することです。この期間は集中した教育指導期間と言えます。
医院全体のレベルアップの絶好の好機になるように
「今回の採用を契機に悪くなった…」との経験はありませんか。ここで大切なことは、新しい職員を採用することによって、先輩職員への刺激となり、また後輩に教えることによる成長等で、職員全体のレベルが向上するように持っていくことです。その方向に心を配り、OJT(日常の仕事を通じて必要な知識・技能・問題解決能力および態度について実施する教育訓練)等を計画し、意欲的に過ごすようにして下さい。