主張 新規陽性者数のみで判断は危険  PDF

 新型コロナウイルスが世界パンデミックの脅威を振りまき、各国が封じ込めに躍起となっている。日本を含めたアジア、ヨーロッパの諸国で、経済活動へのかつてないダメージを鑑み、封じ込めを緩和する動きが顕著となってきた。我が国においても、新規陽性者数の減少を根拠に緊急事態宣言の一部解除がなされた。
 感染拡大は本当に抑えられているのか? 確かに新規陽性者の数は減少しているようだ。騒ぎが始まって以来、毎日溢れかえる報道やネットを主体とした種々の情報に翻弄されながら、ずっと頭の隅にこびりついている疑問が解消されないでいる。連日提供されるのは、PCR検査結果の分子に当たる新規陽性者数のみ。分母の検査数がわからない。検査態勢が追いつかない流行初期においては、被験者を厳選して検査が行われたはずで、当然のことながら陽性率は高かったはずである。3月末から4月にかけて陽性者が急増した時、ほんの数日TVの報道番組で被験者数が示されたことがあったが、すぐに消えてしまった。
 日本は、世界中から批判を浴びている検査実施数の少なさであるが、流行第一波が収まってきたとする根拠に、いまだ新規陽性者数の減少のみが強調されているのは如何なものか?
 政府の対応の遅さに業を煮やした大阪府が、独自の出口戦略とその基準を発表した際、初めて7%という割合が要件の一つとして示された。「週初めは数が減る傾向にあるので」は、小池都知事の常套句であるが、当然のこと検査実施数も減るはずであり、分子だけをもって流れを評価するのは納得がいかない。ましてや錚々たる学者集団である専門家会議や、政府の対策会議において分母が示されていないはずはなく、一般国民向けには公表されず、この点に関して報道機関から疑問の声がほとんど聞こえないのは何故? 何らかの情報操作をしようとしているのでは…等と考えるのは、まだ切迫した状況にない地域に住む者のヒマな勘ぐりなのだろうか?
 目に見えない敵を相手の戦いに、充分な情報公開を望みたいと思う。

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