100万トン超汚染水の行方
福島第一原発には1000基の巨大なタンクが並び、毎日100万トンを超える汚染水がたまりつづけている。デブリ(溶けた核燃料など)の冷却で毎日発生する汚染水を「浄化処理」して溜めていたが、2020年夏には満杯になると試算されている。
東京電力は、19年12月8日、福島第一原子力発電所において貯蔵している放射性物質汚染水について、その放射性物質濃度を法令で定める基準値以下まで下げたうえで、21年3月に海洋に放出することを含む計画をまとめた。
汚染水処理は、事故後に開発されたALPS(アルプス)という多核種除去設備で行う。特殊なフィルターでほとんどの放射性物質、つまり62種類の放射性物質を除去する。ところが初期に導入されたフランス製やアメリカ製の除去装置、そして東芝製ALPS(現在は日立製)はそもそもトラブル続きで充分機能しておらず、その時の汚染水も同じようにタンクに保存されている。そのため1000基のタンクのうち「J1―D」と呼ばれる9基のタンク群の中にある処理水は、ストロンチウムなどが排水基準を1万4000倍も超過しているというのだ。人体の骨などに残りやすい有害なストロンチウムなどがフィルターの不具合で残ったためだという。
ALPSが除去する実力がなかったことで溜まってしまった、基準以上の危険が残ったままの汚染処理水が次々と発見される中、海洋放出に向けた動きが加速している現状に対し、我々は一層注視すべきである。
(京都府歯科保険医協会 副理事長・平田 高士)