2020診療報酬改定こうみる 3  PDF

汎用点数アップの反面、超音波検査の加算引き下げ ――レセプト記載で大きな負担
内科  顧問 関  浩
 今回の改定率は本体プラス0・55%(国費600億円、医療費2600億円)薬価・材料マイナス1・01%(同マイナス1130億円、マイナス4500億円)とされるが、救急病院勤務医への対応に一部消費税財源から充てられており実質本体改定は0・47%、ネットで最終マイナス0・46%の改定であるが、マスコミ報道では例によって医療費アップと喧伝されている。
 全科にまたがってみれば初・再診料、入院基本料、特定入院料の本体点数が全く引き上げられなかった。一方、調剤料の「内服薬、浸煎薬、屯服薬、外用薬」が20年ぶりにプラス2点、薬剤師常勤が算定要件の入院外の調剤技術基本料が26年ぶりのアップでプラス6点。静脈血採取料はプラス5点、点滴注射手技料1・2がプラス1点、また、関節穿刺(片側)がプラス20点引き上げなど院内調剤料、注射、処置、手術の汎用点数が上げられた反面、慢性維持透析の大幅引き下げ、生化学(1)の10項目以上の包括点数、超音波検査のパルスドプラ加算の引き下げなどの改悪があった。
 糖尿病領域では分娩後も継続して血糖管理が必要な場合、分娩後12週間に1回算定できる在宅妊娠糖尿病患者指導管理料「2」が新設された。また、間歇スキャン式持続血糖測定器による自己測定器加算が新設。
 消化器領域では幼児に内視鏡などを行った場合の幼児加算が新設。
 循環器・呼吸器領域ではニコチン依存症管理料が再編され、1回目から5回目の受診における指導および治療管理を包括した「2」が新設された。
 一方、前回改定で保険適用された長谷川式知能評価スケールが3カ月に1回の算定に制限された。
 画像診断のレセプト記載は、従来から撮影部位の記載が求められていたが、今回の改定で部位を選択して記載することにされた。超音波検査の胸腹部についても領域を記載することにされており、医療機関にレセプト請求時の過剰な事務負担をもたらす改定となった。

在宅療養従事者のモチベーション高める改善を
在宅医療  理事 吉河 正人
 在宅医療については、今次改定で大きな変化は見られなかった。
 今回も、協会が機会あるごとに改善を求めている在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料の「単一建物居住者」による不当な点数設定は改善されなかった。繰り返しになるが、在宅患者さん一人ひとりについて、それぞれ診察や検査を行い、その方に適した療養方法を検討、他職種とも協力して、いわばオーダーメイドのサポートを行うことへの評価のはずである。同じ建物に何人の患者さんがおられるかなど全く関係はない。粘り強く要求を続けていきたい。
 同一建物訪問看護・指導料では、同一建物訪問診療料と同様に患者数による逓減が導入されていた。今回はさらに患者数のカウントも、精神科訪問看護・指導料(Ⅲ)算定者と合算されることとなり、難病等複数回数訪問加算や複数名訪問看護・指導加算にもこれが適用される。医療費抑制の流れは何ら変わっていない。新設の訪問診療時超音波検査であるが、往診時には通常の点数を算定する。
 一方で、現状に合わせた改善として評価できるものもいくつか見られる。複数の医療機関で訪問診療を行う場合の在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「2」については、カルテ記載等の要件さえ満たせば6カ月を超えて算定できると明記された。また、在宅患者訪問栄養食事指導料、在宅患者訪問褥瘡管理料における管理栄養士は、他院や栄養ケア・ステーションのスタッフでも可能とされ、管理栄養士自院確保のハードルがなくなった。在宅療養支援病院の往診対応医が、オンコール対応で可となったのも、医師の働き方改革として受け止められる。
 他方、連携型の強化型在宅療養支援診療所、病院のカンファレンスだけにビデオ通話による開催が認められないのは如何なものか。
 在宅療養従事者のモチベーションを高めるための更なる改善を目指したい。

ページの先頭へ