協会は、「京都府内における医療提供体制の確保について」の緊急提言に続き、第二次緊急提言をとりまとめ、▼入院医療体制の強化▼医療材料の緊急配備▼空床確保時の損失補てん▼保健所等の敷地内での公的な発熱外来の設置▼医療経営への支援―を求めた。提言書は4月16日に府に手渡し、提案の説明を行った。対応は健康対策課課長の田中美奈子氏と同参事の玉井菜実氏。
新型コロナで府に二度目の提言
1、国に対して求めていただきたいこと
(1)「コロナ以前」からの政策検討は一旦ストップし、COVID-19対策に注力を
新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本における従来の医療・社会保障政策、それに基づき構築されてきた医療提供体制が、感染症に対していかに脆弱であったかを露呈した。今や「コロナ以前」の医療費抑制、提供体制の絞り込み路線のまま突き進むことは賢明ではない。京都府におかれては、国・厚生労働省に対し、全世代型社会保障改革、地域医療構想・医師偏在是正・医師の働き方等改革を三位一体で進める方針に基づく、外来機能の分化や医療計画の見直し等については審議をストップし、感染収束のその日まではCOVID-19対策に注力するよう求めていただきたい。また収束後、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた医療・社会保障政策を進めることを強く要請していただきたい。
2、京都府に検討・実施していただきたいこと
(1)医療機関がCOVID-19対応に注力できる支援を
①医療機関がCOVID-19対応に注力できる支援が重要である。そうした観点から、政府に対する京都府からの緊急要望は医療提供体制を担う医療機関や関係者を励ますものであると受け止める。京都府にはこうした内容を医療機関や医療者に対しても積極的に発出していただきたい。
②特に医療機関をはじめとした事業者が積極的に対応できるよう、制度やシステムの整備、それらに対する財政的な支援が緊急に必要である。特に医療の現場では、マスク、防護具、消毒用アルコール、酸素、人工呼吸器などの緊急の配備が求められる。状況把握を定期的、継続的に行い実態と対策、見通しを公表するとともに、相互の融通についても支援できる方策を検討していただきたい。
(2)新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる入院医療体制の強化を
①京都府は、新型コロナウイルス感染症専用病床を遅くとも4月末までには、一定の感染症予防対策を講じた一般医療機関を加えて250床に、さらに400床への拡大を目指すとは示しているが、「一定」の内容が不明であるため医療機関側からすれば即応できないと思われる。当会が提言した感染防止対策加算医療機関といった具体的な内容を示すことが必要ではないか。
②ドイツでは緊急でない手術等を延期して病床稼働率を50%以下に下げ、空床確保に伴う補償が国において3300億円以上予算化されている。新型コロナ対応のために空床を確保するような場合には、ドイツのようにそれによる損失補填を講じるなど具体的な方策を講じる必要がある。
③通常の医療提供を極力守る観点からは、従来の病床規制を一時停止して病院敷地等に追加的に簡易病床を設置できる措置を講じることが必要ではないか。
(3)緊急にPCR・抗体検査にも対応する発熱外来設置、保健所機能の活用・拡充を
①京都府、京都市の本庁内に、医師等専門職を含めた対策検討チームを常設し、同様のものを地域の保健所にも設置(京都市の場合は、本庁に集めた専門職を再度各行政区に戻し、保健所機能を復活させる)する必要があると考える。
②保健所には、その敷地内に発熱外来を臨時で設置し、地区医師会の協力を得て開業医・病院勤務医(小児科医も含む)による輪番診療にしてはどうか。
なお、京都府は、帰国者・接触者外来を30カ所から5月中旬までに40カ所に拡充する方針を示しているが、当会としては帰国者・接触者外来を上記の発熱外来に切り替え、ここを拠点にPCRや抗体検査などによって新型コロナウイルス感染の可否を判別して通常の医療提供体制につなげるべきであると考える。
(4)地域医療を支える医療機関を守る取組を
①京都府が医療機関の風評被害対応を国に求めていることに感謝申し上げる。今日、医療機関においては患者減少による経営的ダメージが深刻化しており、診療所閉鎖や休診、縮小に追い込まれる危機に瀕している。医療提供体制確保の観点から、各医療機関への経営支援について具体化を急ぎ、ご検討いただきたい。また、今般の新型コロナウイルス対策にあたっては、緊急避難的なオンライン診療の活用も視野に支援が必要と考える。なお、上記(3)―②で提案した発熱外来における輪番診療制の実施にあたっては、出務費確保をお願いしたい。
②緊急事態宣言を前提に考えるとすれば市中感染を想定することになる。無症状者・軽症者の医療管理には診療所・開業医の参加も想定されている。このため、すべての医療機関で感染症予防策をとれるような大胆な施策が必要である。必要な装備や手技について明示し、Web上の講習など関係者が最新の内容を学べる支援が必要である。
③2020年度の臨床研修が開始されている。研修医に対しても、新型コロナウイルス感染症はじめ、感染防止教育を優先する必要がある。
④新専門医制度についてはプログラムの柔軟な運用を行い、専攻医がCOVID-19対応しやすい措置を検討することなど、日本専門医機構に要請する必要がある。社会学系専門医についても同様である。なお、専攻医がCOVID-19対応で出務する場合には所属先研修機関への給与補填を検討する必要がある。
⑤医療従事者のモチベーション維持の観点からも 働き方改革を踏まえた就業の在り方のガイドラインを示すとともに、感染した場合、メンタルヘルスへの対応等の労働安全施策、相談窓口等をわかりやすく広報することが必要である。
⑥感染患者を受け入れ医療機関の職員への危険手当、装備費、施設改修費についての直接補助を行っていただきたい。大阪市はすでに独自に特別手当を支給する方針を明らかにしている。対象範囲や支給額などは今後詳細を詰めるとあるが、こうした手当に倣い、検討いただきたい。
⑦新型コロナウイルス対策は長期的な構えを構築していくことが必要である可能性が高いことから、京都府保健医療計画・京都府地域包括ケア構想(地域医療構想)の見直しや、地域医療構想調整会議の枠組みを活用した施策が必要である。
(5)府民の生命を守るガイドラインの整備を
①乳幼児においては、現在目安として出されている「発熱後4日間の自宅待機」を実行すれば、重篤化を招く。当会には、小児科では発熱し受診というパターンが基本であり、マイコプラズマ、RS、ヒトメタニューモが乳幼児で流行っている現在、非現実的だと指摘する小児科医の声が寄せられている。別途、小児までを対象とした受診ガイドラインの整備が急務である。
②感染の確認された方にかかわる医療機関や事業所、施設における消毒のガイドラインを整備する必要がある。また、消毒の実施にあたっては感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律第27条の「2」を適用し、保健所の責任において公費により実施できるよう体制を確立していただきたい。
以上